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“どの行にも素数がある”67年来の未解決問題「仮説H1」、45億×45億の巨大正方形まで成立確認と発表【研究紹介】

2026年1月6日

山下 裕毅

先端テクノロジーの研究を論文ベースで記事にするWebメディア「Seamless/シームレス」を運営。最新の研究情報をX(@shiropen2)にて更新中。

ニュージーランドのウェリントン・ヴィクトリア大学に所属するMatt Visserさんが発表したプレプリント論文「Sierpinski’s Hypothesis H1」は、素数に関する仮説「仮説H1」の成立範囲を約45億×約45億まで大幅に拡張して確認したとする研究報告である。

n=4505→約45億に

1から25までの数を5×5の正方形に並べてみよう。最下行に1から5、次の行に6から10、という具合に上へ積み上げていくと、最上行には21から25が入る。各行を見ると、最下行には2、3、5という素数があり、その上の行には7、次は11と13、その次は17と19、最上行には23がある。どの行にも素数が少なくとも1つ含まれている。

▲青色が素数を示す、n=5の仮説H1の一例
▲n=15の仮説H1の一例

1958年、ポーランドの数学者シェルピンスキーとシンツェルは、この現象が一般に成り立つと予想した。すなわち、n×nの正方形(n≥2)に1からn²までの数を同様に並べたとき、どの行にも必ず素数が存在するというのである。これが「仮説H1」だ。

単なる数遊びに見えるかもしれないが、数学界で長年未解決となっているルジャンドル予想やオッペルマン予想といった難問をその一部として含む、強力かつ深遠な命題である。1961年にシンツェルがn=4505までの成立を確認して以来、大きな進展がなかった。

今回発表された研究では、この仮説の成立範囲を飛躍的に広げる成果を発表した。仮説H1がn=4,553,432,387(約45億)までのすべてのケースで成立することを数学的に確認したという。

この証明には、コンピュータによる単純な力技ではなく、「最大素数ギャップ」と呼ばれる素数同士の間隔に関するデータと、「鳩の巣原理」という論理が組み合わされている。

素数は不規則に現れるが、隣り合う素数同士の間隔(ギャップ)には、ある範囲内での上限が存在する。例えば、ある範囲では素数と次の素数の間隔が100だったとして、もし行の長さがこの間隔よりも長ければ、その行の中には必ずどこかに素数が含まれることになる。

現在、約2×10¹⁹までの範囲において、知られている最大の素数ギャップ幅は1676である。したがって、行の長さnが1676より大きければ、その行には必ず少なくとも1つの素数が含まれることになる。

論文によれば、この知見と既存の結果を組み合わせることで、約45億という膨大なサイズの行列まで仮説の成立が確認されたのである。

さらに、今回の検証範囲を超える任意のnについても部分的な結果も得たとされる。素数の個数に関する評価を使うと、どんなに大きな正方形でも少なくとも4分の1の行には素数が含まれることがわかったという。また、素数に関連するチェビシェフ関数の精密な評価を用いることで、任意のnについて下から約13万行目(131,294行目)までは必ず素数を含むことも示された。

Source and Image Credits: Visser, Matt. “Sierpinski’s Hypothesis H1.” arXiv preprint arXiv:2512.22413 (2025).

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