最新記事公開時にプッシュ通知します
2025年11月26日


先端テクノロジーの研究を論文ベースで記事にするWebメディア「Seamless/シームレス」を運営。最新の研究情報をX(@shiropen2)にて更新中。
イスラエルのヘブライ大学の研究者らがScientific Reportsで発表した論文「Faraday effects emerging from the optical magnetic field」は、約180年にわたって信じられてきた光と磁気の定説を覆す発見をした研究報告である。光の磁気成分が物質との相互作用において重要な役割を果たしていることを理論的に証明した。
1845年、物理学者マイケル・ファラデーは、シリカとホウ酸、酸化鉛を含むガラスに磁場をかけ、そこに光を通す実験を行った。その結果、ガラスから出てきた光の偏光方向が変化することを発見した。つまり、一定の磁場にさらされた物質を光が通過する際に、光の偏光面が回転する現象である。これが、光と電磁気が関連することを示す証拠となり、「ファラデー効果」と呼ばれるようになった。
これまで約180年間、この効果は光の電気成分と物質中の電荷との相互作用によるものとされ、光の磁気成分は考慮されなかったり、無関係と考えられたりしていた。
しかし研究チームは、光の磁気成分が円偏光である場合、ガラス中の磁気スピンと強く相互作用し得ると考えた。そこで研究者たちは、磁気系におけるスピンの運動を記述する「ランダウ・リフシッツ・ギルバート」(LLG)方程式に基づく計算を用いた。
計算によると、ファラデーの実験をガラスの代わりに「テルビウム・ガリウム・ガーネット」(TGG)という磁性材料で行った場合、可視光(波長800ナノメートル)が材料を通過する際のファラデー効果の約17.5%をこの磁気相互作用が占める可能性が示され、赤外光(波長1.3マイクロメートル)を使用した場合、その割合は最大75%にも達することが示された。
この発見は、光と磁気の相互作用について新しい理解をもたらす。光の磁気成分による効果は、電気成分による効果と比べると小さいものの、無視はできず、完全に現象を理解するためには、両方の効果を考慮する必要があるとしている。
Source and Image Credits: Assouline, B., Capua, A. Faraday effects emerging from the optical magnetic field. Sci Rep 15, 39566 (2025). https://doi.org/10.1038/s41598-025-24492-9
関連記事



人気記事