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英国の16歳少年がレゴのみで“人間の手”を再現。国際ロボット会議IROSで“親子論文”を発表【研究紹介】

2025年10月28日

山下 裕毅

先端テクノロジーの研究を論文ベースで記事にするWebメディア「Seamless/シームレス」を運営。最新の研究情報をX(@shiropen2)にて更新中。

英ブリストル・グラマー・スクールに通う16歳のJared Leporaさんと、英ブリストル大学のロボット工学教授であり父親のNathan Leporaさんらは、レゴマインドストームのパーツのみを使用して人間の手を模倣した高機能ロボットハンド「Educational SoftHand-A」を開発した

このロボットハンドは、ロボットの国際会議「IROS 2025」で論文「Educational SoftHand-A: Building an Anthropomorphic Hand with Soft Synergies using LEGO® MINDSTORMS®」として発表された。

▲レゴで作ったロボットハンドを持ってポスター前で写真を撮るJared Leporaさん(IROS 2025のXより引用

ヒトが物を掴む際の指同士の連携を模倣

このロボットハンドの仕組みは人間の筋肉の働きをまねている。各指には2本のひもが通っており、1本を引っ張ると指が曲がり、もう1本を引っ張ると指が伸びる。これは人間の手で、主動筋と拮抗筋が対になって働くのと同じ原理である。

4本の指(親指1本と指3本)にはそれぞれ3つの関節があり、レゴのクラッチギアでつくられた差動装置が指を連結し、物体に触れるまで一緒に動き、触れると止まる。2つのモーターでひもを制御することで、コップや靴、ボール、ぬいぐるみなど、800グラムまでの多様な物体を掴み持ち上げることができる。

▲SoftHand-Aの設計概要
▲主動筋(青)と拮抗筋(赤)が指内部に装着されている
▲指1本の内部を横から見た図

このロボットハンドは、完全に閉じるのに0.98秒かかり、完全に開くのに1.12秒かかる。ロボットハンドの指1本は5ニュートンの荷重に耐え、6ニュートンの重量を押し出すことができた。

工夫として、4本の指がバラバラに動くのではなく、協調して動くようになっている。これは「ソフトシナジー」と呼ばれる仕組みで、人間が物をつかむときに指が自然に連携するのと同じである。LEGOの歯車を使った特殊な機構により、この複雑な動きを実現した。

▲様々な物体を把持することができる

もともとこの技術は、イタリアの研究所が開発した高価な3Dプリンター製のロボットハンドが基になっている。それを子供でも組み立てられるLEGOで再現した。

LEGOだけでつくるという制約から、指の数を4本に減らしたり、3Dプリント版で使用される約150個の金属ベアリングと複数のバネを、100個以上のベアリングとクラッチギアで代替したりする必要があった。この設計により、シンプルな駆動と制御機構でありながら、人間の手のような自然な動きを実現している。

Source and Image Credits: Lepora, Jared K., et al. “Educational SoftHand-A: Building an Anthropomorphic Hand with Soft Synergies using LEGO MINDSTORMS.” arXiv preprint arXiv:2510.15638 (2025).

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