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2025年10月16日
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米Northwell Healthなどに所属する研究者らが発表したプレプリント論文「Cortically Interfaced Human Avatar Enables Remote Volitional Grasp and Shared Discriminative Touch」は、ブレインインターフェースを介して他者の身体を制御し、他者を通じて触覚を共有する「ヒューマンアバター」システムが実現した、とする研究報告である。
論文によると、研究チームは、重度の四肢麻痺患者が脳に埋め込まれた電極を通じて別の人間の手を無線制御し、その手が掴んだ物体の感触を識別できることを実証したという。
研究では、頸髄損傷により四肢麻痺となった40代男性の左脳に、合計5つの微小電極アレイを埋め込んだ。運動野(M1)には64チャンネルのアレイを2つ(計128電極)、体性感覚野(S1)には32チャンネルのアレイを3つ(計96電極)配置し、総計224個の電極で脳活動の記録と刺激を行う。
患者が手を握る動作を想像すると、その神経信号がLSTMニューラルネットワークによってリアルタイムでデコードされ、別の参加者(アバター役)の前腕に装着された104個の電極を持つ高精度神経筋電気刺激装置に無線送信される。この刺激により、健常者または別の脊髄損傷患者の手が実際に握る動作を行う。
このシステムには双方向性がある。アバター役の人の親指と人差し指に装着された力センサーが物体を掴む際の圧力を測定し、そのデータが即座に四肢麻痺患者の体性感覚野への電気刺激パターンに変換される。これにより、患者はアバターが触った感触を脳で得られる。研究チームは8つの異なる刺激パラダイムを試験し、93.3%という高い識別精度を達成した。
実験では、柔らかいフォームボール、高密度フォームボール、野球ボールという硬さの異なる3つの物体を用意。四肢麻痺患者は目隠しをした状態で、アバターの手を通じて物体を64.3%の精度で識別することに成功した。
研究チームはさらに、2人の脊髄損傷患者間での協力的リハビリテーションという応用を実証した。四肢麻痺患者が、不完全脊髄損傷により上肢機能が低下した60代女性患者の手をブレインインターフェース経由で制御。水の入った700グラムのボトルを掴んで傾ける課題を共同で遂行した。女性患者が単独で行った場合の成功率は39%だったが、ブレインインターフェースを介した協力により94%まで向上した。
Source and Image Credits: Evan Cater, Sarah Wandelt, Aniket Jangam, Zeev Elias, Erona Ibroci, Christina Maffei, Douglas Griffin, Stephan Bickel, Netanel Ben-Shalom, Adam Stein, Ashesh Mehta, Santosh Chandrasekaran, Chad Bouton. Cortically Interfaced Human Avatar Enables Remote Volitional Grasp and Shared Discriminative Touch. medRxiv 2025.09.21.25336267; doi: https://doi.org/10.1101/2025.09.21.25336267
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