生物が発する微弱な光「バイオフォトン」 死ぬと消失、マウス実験で検証。植物実験では傷つけた部分が増光【研究紹介】

2025年5月13日

山下 裕毅

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カナダのカルガリー大学などに所属する研究者らが発表した論文「Imaging Ultraweak Photon Emission from Living and Dead Mice and from Plants under Stress」は、生物が微弱に発している光「バイオフォトン」を調査した研究報告である。

生きたマウスと死んだマウスの「光」を比較

生物は非常に微弱な光(10-10³光子/cm²/秒、波長範囲は200~1000nm)を放出していることが知られている。これを「Ultraweak Photon Emission」(UPE)やバイオフォトンと呼び、すべての生物から観察できるが、とても弱いため特殊な機器でしか検出できない。

研究チームは、超高感度カメラを使ってUPEを観察する3つの実験を行った。

1つ目の実験では、生きているマウスと死んだマウスを比較した。まず4匹の生きているマウスを30分間暗闇に置いた後、60分間撮影した。その後、同じマウスを安楽死させて再び撮影した。結果は、生きているマウスは死んだマウスよりも明らかに多くの光を放出していた。生きているマウスの体全体から光が放出される一方、死んだマウスではほとんど光が見られなかった。この実験は生命活動とUPEの関係を示している。

▲生きているマウス(上段)は死亡したマウス(下段)と比較して強いバイオフォトンを放出している

2つ目の実験では、シロイヌナズナという植物(生きている状態)と、ヤドリフカノキという植物から切り取った葉を、異なる温度で観察した。シロイヌナズナは22℃と26℃で、切り取った葉は24℃から39℃までの間を6段階に分けた温度で測定した。結果として、ヤドリフカノキから切り取った葉においては、温度が上がるにつれて放出される光の強度も増加した。しかし36℃を超えると光の強度が減少し始めた。これは高温による細胞へのダメージが原因と考えられる。

3つ目の実験では、ヤドリフカノキから切り取った葉を4枚ずつの5グループに分け、各葉に傷をつけ、その部分に異なる化学物質(アルコール、過酸化水素、ベンゾカイン。1枚は無処理)を塗布した。16時間にわたって観察した結果、傷ついた部分はどの葉でも他の部分より明るく光っていた。さらに、ベンゾカイン(麻酔薬)を塗布した傷が最も強く光を放出することがわかった。

▲植物の葉に傷をつけるとバイオフォトンが増加し、特にベンゾカインを塗布した場合に最も強い光放出が観察される

これらの実験から、UPEは生命活動の存在を示す指標になり得ることや、植物のストレス反応(温度変化や傷)を検出する方法になる可能性が示された。将来的にはこの信号を観察することで人間の健康状態を追跡したり、病気を検出したりできるようになるかもしれない。

Source and Image Credits: V. SalariV. SeshanL. FrankleD. EnglandC. SimonD. Oblak. Imaging Ultraweak Photon Emission from Living and Dead Mice and from Plants under Stress. The Journal of Physical Chemistry Letters 2025 16 (17), 4354-4362 DOI: 10.1021/acs.jpclett.4c03546

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