人間が「ランダム」に数字を選ぶと、固有の“クセ”が出る。1年後の生成パターンの予測も可能?【研究紹介】

2025年2月12日

山下 裕毅

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米ジョンズ・ホプキンズ大学や米イェール大学などに所属する研究者らが発表した論文「Random behavior is stable across tasks and time」は、人間のランダム性生成には個人特有のパターンが存在し、それが異なるタスク間や時間経過を超えて安定して保持されることを示した研究報告である。

▲1~9の数字をランダムに配置する実験の概要図

第1の実験:モデル構築すれば、選択パターンが予測可能に

研究チームは3つの実験を通じて、この仮説を体系的に検証した。

第1の実験では、142名の参加者を対象に2種類のタスクを行った。参加者は、1つ目のタスクではキーボードを使用して250個のランダムな数字を生成し、2つ目のタスクではマウスを使って一列に並んだ9つの箱から250回のランダムな位置選択を行った。

▲第1の実験の概要

分析の結果、同じ選択を繰り返す回数、連続する選択間の数値的距離、方向転換の回数といった特徴において、2つのタスク間で強い相関が見られた。

さらに、3つのパラメータを用いた予測モデルを開発したところ、このモデルは個人の選択パターンを高い精度で予測できた。特に重要なのは、あるタスクから得られたモデルが別のタスクにおける個人の行動も予測できた点である。これらの結果は、人間のランダム性生成には個人固有の特徴があり、それが異なる種類のタスクを超えて一貫して現れることを示している。

第2、第3の実験:1年後の「クセ」を確かめると

第2の実験では、位置選択タスクを1次元から2次元に変更し、3×3のグリッド上での選択を参加者に求めた。第1実験では数字の生成と位置の選択が共に直線上の配置であったため、類似性が単に形式の共通性に起因する可能性があった。そこで、空間配置が大きく異なる2次元グリッドを用いることで、表面的な特徴が異なる状況でも個人のランダム性生成パターンが一貫しているかを検証した。

▲第2の実験の概要

結果は、第1の実験と同様に、タスク間で強い相関が見られた。さらに、あるタスクのデータから構築したモデルが、もう一方のタスクにおける個人の行動も予測できることが示された。

注目すべきは、表面的な特徴が大きく異なる2つのタスク(直線上の数字生成と2次元グリッド上の位置選択)であるにもかかわらず、個人のランダム性生成パターンが一貫していた点である。これらの結果は、人間のランダム性生成における個人固有の特徴が、タスクの形式や特徴が大きく異なる場合でも安定して保持されることを示している。

実験3では、実験2の参加者53名を対象に、約1年後に同じタスクを実施し、ランダム性生成パターンの時間的安定性を検証した。分析の結果、1年前と1年後の配列において、数字生成タスクと2次元位置生成タスクの両方で、繰り返しの回数、数値的距離、方向転換の回数に強い相関が見られた。

▲1年後のランダム行動の予測結果

特筆すべきは、1年前のデータから構築したモデルが、1年後の個人の選択を有意に予測できたことである。数字生成タスクでは37.9%、位置生成タスクでは38.8%の精度で次のランダムな選択を予測できた。

Source and Image Credits: Boger, T., Yousif, S. R., McDougle, S., & Rutledge, R. (2025, February 5). Random behavior is stable across tasks and time. https://doi.org/10.31234/osf.io/mtfdc_v1

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