2025年1月10日
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米ライス大学に所属する研究者らが発表した論文「Particle exchange statistics beyond fermions and bosons」は、「パラ粒子」(Paraparticles)と呼ばれる新種の粒子が存在する可能性を示した研究報告である。
宇宙のすべての基本粒子は、フェルミ粒子(Fermion)とボース粒子(Boson)という2つのグループのいずれかに分類されるというのが、これまでの定説であった。
フェルミ粒子とボース粒子の違いは、2つの同じ粒子を入れ替えたときの性質の変化にある。ボース粒子である光子を入れ替えても、その性質を表す量子波動関数は変化しない。一方、フェルミ粒子である電子を入れ替えると、波動関数は負の値になる。
この違いは実際の物理現象に大きな影響を与えている。例えば、ボース粒子は同じ場所に無限個まで重なることができ、これがレーザーの仕組みの基礎となっている。反対に、フェルミ粒子は同じ場所に2個以上存在できず、この性質が中性子星を崩壊から守っているのである。
例外として、2次元でのエニオン(anyon)と並んで、1950年代にHerbert Greenによって、より複雑な粒子交換モデル「パラ統計」の具体的な理論が構築された。その後の研究を通して、フェルミ粒子やボース粒子と区別できないと考えられていたこの理論について、今回の研究チームは新しい数学的枠組みを構築。パラ粒子が、実際の物理系で観察可能な形で存在し得ることを示した。
研究チームは、局所性や厳密な可解性を保持した新しい第二量子化の定式化を導入。パラ粒子が、従来のフェルミ粒子やボース粒子とは異なる、一般化された排他原理に従うことを実証したという。これにより、パラ粒子は新しい種類の理想気体を形成する可能性があると示された。
特に重要な発見は、1次元および2次元の特定の量子スピン系において、このパラ粒子が準粒子励起として実際に現れ得ると示したことである。研究チームは、具体的な物理モデルを構築し、そのモデルを厳密に解くことで、パラ粒子が想定される量子スピン系において励起状態として存在することを証明したとしている。
この研究成果は、凝縮系物理学における新しい準粒子の発見可能性とともに、より推測的ではあるものの、自然界における新しい素粒子の存在可能性をも示唆している。
Source and Image Credits: Wang, Z., Hazzard, K.R.A. Particle exchange statistics beyond fermions and bosons. Nature 637, 314–318 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-024-08262-7
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