「無限」に関する新概念。新たな巨大基数を数学者ら提唱、未解決問題「HOD予想」に影響?【研究紹介】

2024年12月10日

山下 裕毅

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オーストリアのウィーン工科大学、スペインのバルセロナ大学、ドイツのハンブルク大学に所属する研究者らが発表した論文「Large cardinals, structural reflection, and the HOD Conjecture」は、無限に関する概念「巨大基数」について新たな発見をしたとする研究報告である。

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研究内容

数学において、無限大は単一の概念ではない。たとえば、すべての自然数の集合も無限大であり、すべての実数の集合も無限大である。これらの間には大きさの違いがあり、数学者たちは、無限大の中でも特定の性質を持つ「巨大基数」を研究してきた。

これまで大基数は、小さいものから大きいものへと順序よく並ぶ線形的な構造を持つと考えられてきた。しかし今回導入された「exacting」および「ultraexacting」と名付けられた新しい大基数の概念は、そのような単純な構造では説明できない性質を持っている。

特に注目すべきは、この新しい無限大が他の既知の無限大と組み合わさった時の予想外の振る舞いにある。研究チームは、特定の条件下でこの新しい無限大が存在すると、さらに大きな無限大の存在が必然的に導かれることを数学的に証明した。これは、無限の大きさの階層構造が、これまで考えられていたよりもはるかに複雑であることを示している。

研究チームはまた、これらの新概念が現代数学の基礎理論である集合論(ZFC)と矛盾しないことも示した。さらに、これらの概念は「構造的反射原理」という自然な数学的手法によって特徴付けられることも証明した。これは、大きな数学的構造の性質が、より小さな部分構造にも反映されるという原理である。

さらに研究チームは、この新しい無限大の存在が、集合論における重要な2つの予想(HOD予想とUltimate-L予想)を反証できることを示した。これらの予想は集合論の宇宙がある程度単純な構造を持つという考えに基づいていたが、新しい無限の発見により、実際にはより複雑な構造を持つ可能性が示された。

Source and Image Credits: Aguilera, Juan P., Joan Bagaria, and Philipp Lücke. “Large cardinals, structural reflection, and the HOD Conjecture.” arXiv preprint arXiv:2411.11568 (2024).

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