2024年11月12日
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米コロラド大学ボルダー校などに所属する研究者らが発表した論文「Quantum permutation puzzles with indistinguishable particles」は、量子力学の性質を取り入れた新しいタイプのパズルについての理論研究である。
研究チームは、古典的なパズルの色付きピースを量子粒子に置き換えた「量子版パズル」を考案した。同じ色のピースは、区別できない同一の量子粒子として扱われる。研究では主に2×2の量子スライドパズルに焦点を当て、2×2×1の量子ルービックキューブについても検討している。
量子版の最大の特徴は、従来のパズルの「交換」という操作に加えて、量子力学に基づく「重ね合わせ」操作(square root of SWAP)が可能なことである。これは、2つの粒子が、「場所を交換する」と「元の位置にとどまる」という2つの状態を、同時にとれるというものだ。この新しい操作により、古典的なパズルでは実現できない量子状態をつくり出すことができる。
数学的な解析により、この重ね合わせ操作を導入すると、パズルが取りうる状態の数は無限となることが示された。ただし、これはパズルが解けなくなることを意味するわけではない。
研究チームは、2×2のスライドパズルについて、古典的な解法(交換のみを使用)、量子的 な解法(重ね合わせ操作を使用)、そして両方を組み合わせた解法の3つのアプローチをシミュ レーションで比較した。
その結果、古典的な解法は平均5.88手、量子的な解法は平均5.32手、両方を組み合わせた解法は平均4.77手でパズルを解けることが示された。量子的な解法は、特に複雑な状態のパズルを解く際に優位性を示した。
2×2×1の量子ルービックキューブについては、6つの固有状態を持ち、古典的な解法では最大3手で解けることが示されている。このキューブにも重ね合わせ操作を適用できる。ただし、論文ではこうした重ね合わせ操作のできる量子版パズルについて、物理的な実装には課題があることも指摘されている。
Source and Image Credits: Lordi, Noah, et al. “Quantum permutation puzzles with indistinguishable particles.” arXiv preprint arXiv:2410.22287 (2024).
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