2024年10月1日
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インドのHomi Bhabha National Instituteに所属する研究者らが発表した論文「Multicellular artificial neural network-type architectures demonstrate computational problem solving」は、遺伝子操作された大腸菌由来の細菌(バクテリア)が人工ニューラルネットワーク(ANN)型のアーキテクチャを用いて、様々な数学的問題を解決できることを実証した研究報告である。
この研究では、「バクトニューロン」と呼ばれる特殊な細菌を使用した計算方法を提案している。バクトニューロンは、遺伝子工学的に改変された細菌で、ANNにおける人工ニューロンのように機能するよう設計されている。
バクトニューロンの仕組みは、従来のコンピュータとは大きく異なる。通常のコンピュータが電圧の高低で0と1を表現するのに対し、バクトニューロンは、4種類の化学物質(AHL、IPTG、aTc、ARA)を使用して2進数の入力を表現し、これに対する細菌の反応によって計算を行う。
システムの出力は蛍光タンパク質の発現によって表現される。例えば、入力された数が正解であれば高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)が発現し、そうでなければE2-Crimsonという赤色蛍光タンパク質が発現する。青色(mTagBFP2)とオレンジ色(mKO2)の蛍光タンパク質も出力に使用されている。
バクトニューロンは、個々の細菌は単細胞生物だが、モジュール式で全体として見れば単層ANNのように協調して機能する。また、最近は2~5マイクロメートルという極小サイズで従来のコンピュータチップよりも小さい。さらに自己複製能力があるため、大量生産が可能。そのため、従来のコンピュータ技術では到達不可能な小さい計算機を低コストで実現できる可能性がある。
研究チームは、12種類の異なるタスクをバクトニューロンに実行させることで、その多様な問題解決能力を実証した。結果は、0から9までの数字が素数であるかどうか、またはAからLまでの文字が母音であるかどうかといった判定や、ピザを特定の数の直線でカットした際にできる最大スライス数の算出などに成功した。これらの判定結果は、バクトニューロンが異なる色の蛍光を発することで示される。
Source and Image Credits: Bonnerjee, D., Chakraborty, S., Mukherjee, B. et al. Multicellular artificial neural network-type architectures demonstrate computational problem solving. Nat Chem Biol (2024). https://doi.org/10.1038/s41589-024-01711-4
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