電力不要「“ゴム”コンピュータ」 伸縮により「0」と「1」をカウント【研究紹介】

2024年5月28日

山下 裕毅

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オランダのライデン大学と研究機関AMOLFに所属する研究者らが発表した論文「Controlled pathways and sequential information processing in serially coupled mechanical hysterons」は、ゴムを使った構造物を用いて、エレベーター、自動販売機、改札口、洗濯機などのデバイスに用いられる単純な電子計算タスクを実行できることを示した研究報告である。

研究内容

従来の電子機器では、複雑な回路を構成する多数の要素を用いてデジタルビットによる計算が行われている。一方、研究チームは、細長いゴム素材を機械的なビットとして使用した構造体を組み立てることで、電子回路を用いずに計算を行うという代替戦略を見出した。ただし、この材料を機械として機能させるためには、個々のビット間の相互作用の制御が重要となる。

研究チームは、まず2ビットのバイナリカウンターとして機能する「ゴムコンピュータ」を作成した。このゴムコンピュータを引き伸ばすと、「00」に始まり、「01」、「10」、「11」と数をカウントできる。そして、ゴムを元に戻すと、今度は「11」から「00」へと戻っていく。

▲2ビットのバイナリカウンターとして機能するゴムコンピュータの動作サンプル

このように伸ばしたり縮めたりすることで、ゴムの状態が変化し、それぞれの状態が0と1の情報に対応する。ゴムを機械的なビットとしてつなげることにより、情報を保存したり、処理したりすることができる。また、ゴムの伸縮のための動力源は電力ではなく、人力や機械的な力によっても供給できる。

さらに、研究チームは3ビットのゴムコンピュータの設計にも成功した。3ビットのゴムコンピュータを使って、17通りの簡単な計算が可能となる。

▲3ビットのバイナリカウンターとして機能するゴムコンピュータの動作サンプル
▲3ビットシステムによる17通りの計算

ゴムコンピュータを用いた応用例として、回転式アームを用いて入場管理を行う改札口の機能が挙げられる。お金の投入と、人間による押し込み動作に反応して、アームのロック及びロック解除を行うメカニズムを、特定の状態や動きの順番によって真似るというものである。さらに、このゴムコンピュータは、ダイヤル錠や自動販売機などにも応用可能である。

▲ゴムコンピュータを使用した回転アームの改札口

この研究は、電力供給が得られない状況下でも、デバイスを制御するための新たな方法を提案するものである。

Source and Image Credits: Jingran Liu, Margot Teunisse, George Korovin, Ivo R. Vermaire, Lishuai Jin, Hadrien Bense and Martin van Hecke. Controlled pathways and sequential information processing in serially coupled mechanical hysterons

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