【デブサミウーマン】Women in Agileメンバーが語る、「小さな違和感」にアジャイルやスクラムが役立つ理由【イベントレポート】

2022年1月11日

株式会社ホロラボ/アギレルゴコンサルティング株式会社 シニアアジャイルコーチ、品川アジャイル、Scrum Tokyo

川口 恭伸

2008年スクラムに出会い、パイロットプロジェクトを始める。2011年イノベーションスプリント実行委員長、2011年からスクラムギャザリング東京実行委員。2012-2018年楽天にてアジャイルコーチ。「Fearless Change」「ユーザーストーリーマッピング」監訳、「Joy, inc」「ScrumMaster the Book」共訳、「アジャイルエンタープライズ」監修。認定スクラムプロフェッショナル。認定スクラムトレーニングの運営・共同講師経験多数。2021年8月よりホロラボに入社。

Slalom株式会社 Agile Specialist Scrum Masters Night!発起人

知花 里香

約10年前からアジャイル・スクラムを基軸としたチーム・組織変革、プロセス・オペレーションマネジメント、リーダーシップ改革等を実践。アジャイルコミュニティの立ち上げや、カンファレンス登壇等を通じて企業を横断した知識創造の場の醸成に尽力してきた。現在はデジタル変革の戦略策定〜開発までを一貫して行う米国コンサルティング企業・Slalom にてビジネス戦略構築やアジャイルリーダーの育成を行う。5才の息子の母。「育児も仕事も諦めない!」がモットー。

クリエーションライン株式会社 アジャイル札幌

伊藤 いづみ

北海道札幌市在住のスクラムマスター、アジャイルコーチを目指して修行中。 「アジャイルについて、アツく話し合い、実際に手を動かして体験しながら学び、現場をよりよくするためのヒントをみんなで見つけ続ける」という”アジャイル札幌宣言”のもと、有志の仲間と立ち上げたアジャイル札幌の運営スタッフ10年目。ほどほどに激辛い料理とパクチーと牡蠣をこよなく愛する2児と猫1匹の母。

合同会社マネジメントナビ 代表社員

越智 由美子

PMP、認定スクラムマスター。銀行系COBOLプログラマーを経て、外資系SIerで様々なプロジェクトを経験。現在はフリーランスでコンサルやPMOとして活動。アジャイル開発を目指しているが、機会に巡り合えず、ウォーターフォールの現場でスクラムを活かせる方法を模索中。PMBOK Guide第7版をnoteにまとめている。

アジャイルコミュニティにおける女性のネットワーク構築やキャリア促進を支援する非営利組織「Women in Agile(WiA) 」。人間的な側面に着目し、小さなチームで相手に向き合うアジャイルやスクラム活動によって、多様な場面・職場で感じる「小さな違和感」を取り除くべく、運営メンバー4人が語り合う。

本レポートは、翔泳社 CodeZine編集部が主催するITエンジニア向けカンファレンス「Women Developers Summit」より、「Women in Agile:VRパネル~多様性を活かすって、実際どうなの?会議」セッションをレポート。パネルセッションは話題のVRサービス『Horizon Workrooms』上から繰り広げられた。

第1弾はこちら
【デブサミウーマン】マイノリティのバリアを開放して、本領発揮できるITエンジニアコミュニティをつくった話【イベントレポート】

人々が多様に表現ができ、平等・包括的であることを目指す

「Women in Agileはアジャイルコミュニティで女性の活動を支援するために包括的な活動を行う、グローバルの非営利組織です」

セッションは、まず知花氏から「Women in Agile」についての紹介から始まった。Women in Agileは世界各国の約60の都市で、アジャイルリーダーの女性たちが活動している。コミュニティ名にWomenとあるが、女性リーダーを増やしていくことにフォーカスを当ててはいますが、本質的なテーマは「多様性を活かし・活かされていくこと」。「アジャイルに関わる人々の、多様な表現やアイディアが、企業活動の強化に繋がっていくためにどうしていけばいいかをテーマにしている」と、知花氏は強調する。また、具体的な取り組みとして、3つの取り組みを紹介した。

1.Conference Allyship:カンファレンスやイベントを通じて女性の登壇機会の創出や議論機会の促進
2.Launching New Voices:アイディアや知見の相互提供の機会創出、次世代の学習の場の提供、アジャイルリーダーの育成
3.Seeding Local Communities:地域コミュニティに向けた奨学金支援

Women in Agileは非営利組織のため、こうした活動を支える運営費は、個人や企業からの寄付に頼らざるを得ない。何かしらのかたちで参加してみたい人や、支援したいという企業を募っているという。

▲WiAが現在行われている取り組みのインパクトと活動内容を紹介している

「ちょっとした違和感」を共有するところから始めませんか?

実は、川口氏は今回「Women Developers Summit」に登壇し、女性のマイノリティ問題に対して語りたいとアジャイルコミュニティのメンバーに話したところ、女性メンバーからあまり共感する声は得られなかった。「男女の違いで困っていることは特にない」「別に女性に限ったカンファレンスとかやる必要ないんじゃない?」など、職場や仕事においてあまり違和感を覚えていない方のほうが多いという。

アジャイルコミュニティにおいては、「女性だから」ということで困っている人があまりいないという事実に着目した川口氏。登壇メンバーに意見を求めてみると、長い間アジャイルコミュニティに身を置いてきた伊藤氏は、こう語っている。

「たしかにアジャイルコミュニティにどっぷり漬かっている人間としては、男女の違いはもちろん、あらゆる違いみたいなことを気にしたり悩んだりしたことがないんですよね。男性が多くて、女性が少ないことで不便だと思ったことがなくて」

だが、あるときアジャイル以外の技術コミュニティの勉強会に参加しときに、イベント後のネットワーキングパーティーで、これまで経験のなかった違和感を覚えたと明かす。

「イベントの参加者の男女比は9:1。ご自由にご歓談くださいって言われたときに、男性同士の輪がたくさんできる一方、少数だった女性が輪の外にポツンポツン取り残されてしまった。今まで感じたことのない疎外感がありました」

アジャイルコミュニティになかった男女のキャズム(壁)は、まだ結構残っているのではないかと気付かされたという。伊藤氏は、「もしかしたら結構大事なことを見落としてたのかもしれない」と、そのとき初めて気づいたと語る。

「そもそもアジャイルは人間面に着目しようという考え方。テクノロジーはもちろん大事だけど、テクノロジーを扱うのは人間なんです。開発する人、ビジネスサイドの人、ユーザーなど関わる人は全て大事にして、現実に即してやっていきましょうと。特にスクラムは3人~6人くらいのチーム開発で、目の前にいる全員はただのチームメンバー。重要なのは目の前にいる人と向き合うことで、相手の属性はあまり気にしない

知花氏も、「アジャイルなチームは違和感を覚えた時に他者に伝えやすい。なぜならスクラムマスターやアジャイルコーチの支援により担保される心理的安全性をベースに、チーム自身が反復的な働き方改善を続ける過程で関係性も育まれるから。この「関係性を育む」ための実践方法や前提となる価値観の体系は、この20年世界中で多くの実験や挑戦が行われてきたため、具体的な事例や知恵を知ることができます。しかし、アジャイルが浸透していない企業やコミュニティなどの環境では、まだまだ難しさを感じてる方はたくさんいらっしゃるのではないか」と同調する。

性別の違い以外に、日常生活において違和感を覚えることは多々ある。アジャイルコミュニティの中では、その違和感を1個ずつ見つけながら解決し、次のループを回していく。このアジャイルならではの手法を活用することで、違和感解消に繋げられないかと川口氏は呼びかけた。

▲イベント当日VRサービス『Horizon Workrooms』会場の様子

ウォーターフォールプロジェクトがアジャイル化している

今回の登壇者で、まだアジャイル開発の現場に身を置いたことがないという越智氏。アジャイルコミュニティの話はおとぎ話のようでうらやましいと笑いながら、大規模なウォーターフォールプロジェクトでの実情をこう明かす。

「最大100人くらいの大規模プロジェクトになっても、メンバーはほとんど男性ばかり。プロジェクトリーダーは20人くらいいるのに、女性は私一人ということは少なくありません」

そして、女性が少ないことで、男性も損をしていると越智氏は強調する。

多様性が高いほうが生産性が上がるというデータもあるし、様々な視点から工夫や改善ができるようになる可能性がある。もっと女性が活躍できた方が絶対にみんなが幸せになれると思います

とはいえ、すでに出来上がっているプロジェクト体制を変えることは難しい。採用や職場での待遇などの対策、そして男性だけでなく、女性側にも意識や行動の変容を促す必要があるだろう。「簡単なことではないが、それでも変わっていかなければいけない」と越智氏。ウォーターフォール界隈で起きている変化について、話を展開していく。

「PMBOK(Project Management Body of Knowledge)というプロジェクト管理に関する知識やノウハウがまとめられている参考書があるのですが、最近出た第7版の内容が業界を騒然とさせました」

これまでのPMBOKは、PDCAの「計画→実行→評価→改善」のサイクルを繰り返し、ウォーターフォール開発のフェーズを回すプロセスについて書かれており、グッドプラクティスを集約しているうちにどんどん分厚くなっていた。それが今回の改訂で、プロセスに関する部分がなくなり、ぐっと薄くなったのである。

秘伝のタレのようなグッドプラクティスの集約だったものが、原則だけが書かれていて、それを自分たちで味付けして食べなさい、そのやり方は自分たちで考えなさいに変わったんです。これはもうウォーターフォールじゃないし、むしろスクラムガイド。ウォーターフォールの限界が来ているのかもしれません」

変化が起きつつあるウォーターフォールプロジェクトで、女性の活躍の場も広がるだろう。しかしそこでは、「女性だから」「女性らしく」ではなく、「自分らしさ」といった個人の特性が重要となる。

「アジャイルは人と人を見ながらコミュニケーションを取っていく。例えば、女性が何らかの不利益を感じている環境があったとしたら、変わらなくてはいけないのは女性ではなく、周りの方なんです。周りをどう動かしていくかはすごく難しいところでもあります」

正解はないが、変わるためにはお互いの理解が必要であり、違和感を伝えるコミュニケーションから始めていく。アジャイルはその過程において、きっと役立つであろう。その行動を踏み出すためにも、仲間を増やしたいとメッセージを送り、セッションは終了した。

セッションでは語り切れなかったという伊藤氏が書いたブログや、Women in Agileのサイトも参考情報として以下に示したので、興味がある人はぜひアクセスしてみてほしい。

【参考リンク】

文:馬場美由紀

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