【新連載】育児とキャリアは人生の冒険!戸倉彩が語るワークライフの再設計の方法論

2023年12月13日

戸倉彩

IT業界でシステムエンジニア、セキュリティエンジニア、テクニカルエバンジェリスト等の豊富な経験に支えられ、23年以上のキャリアを歩み続けるテクニカルパーソン。出産と育児に専念するため2年間の休職期間を経て、2011年に日本マイクロソフトに入社。2018年に日本IBMに転じ、現在はカスタマーサクセス部長としてテクニカルチームをリード。
プライベートでは一児のシングルマザーとして子育てと仕事を両立しながら、ダイバーシティ推進、OSS貢献を含めたテクニカルコミュニティ運営にも情熱を注ぐ。日々の学びや最新トレンドに関する情報をX(@ayatokura )で更新中。

こんにちは。職業「戸倉彩」です。 

育児は人生の大きな転換点であり、それは同時に私たちの仕事に対する考え方や働き方にも大きな変革をもたらします。特にキャリアを大切にしたい子育てする者にとって、ワークライフバランスの再設計を迫られる時です。本コラムでは、育児のプロジェクトマネジメントという視点から、子供の誕生前後で変わった生活についての具体的な例を挙げつつ、日々の生活のペースをどのように整えるか、そして自分自身の目標と家族のニーズをどうバランス良く組み合わせるかについてお話しします。 

私たちは変化する自己のアイデンティティだけでなく、取り巻く社会環境とも向き合いながら、育児を通じて得られる新たなスキルや洞察をキャリアに活かす方法を見つけ出せることが重要です。これは一朝一夕に達成できるものではなく、自己分析から始まり、具体的な目標設定、そして柔軟性を持って働く方法の模索が求められます。 

家族や職場でのサポート体制の構築、メンタルヘルスの維持に至るまで、育児中にキャリアを維持し、さらには成長させるための実践的な私の考え方をお伝えします。育児という人生の旅の中で、キャリアという舞台においても輝き続けるための冒険を共に始めましょう。 

育児とのバランスを考慮したキャリア変革の実現

現在、私は大手外資系IT企業に身を置き、カスタマー・サクセス・マネージャー・アーキテクトという、ITエンジニア集団が所属しているチームのマネージャーを務めています。私の職務は、主に自社が提供しているData and AI関連のソフトウェアやクラウドサービスのライセンス契約をしていただいたお客様を対象に、お客様の成功体験と満足度を最大化するための戦略策定と実行、およびチームの運用管理に集中しています。これには、お客様からのフィードバックの収集、社内関連部門への製品やサービスの改善のエスカレーション、チームメンバーの指導や自分自身も一定のテクニカルなスキルを維持することが含まれます。 

子供が生まれる前、私は自分自身のキャリアを自分なりの道筋に沿って進めてきました。長時間労働、急な会議、そしてキャリアアップのための絶え間ない努力が日常でした。しかし、子供が誕生すると、これらの慣れ親しんだルーティンは一変しました。これは、キャリアに対する見方、価値観、そして転機の瞬間でした。 

育児は、私たちに時間管理、優先順位の設定、そしてストレス耐性といった、仕事においても重要なスキルを教えてくれますしかし同時に、キャリアの進路や職場での役割に再考を迫られることもあります。私の場合、出産のために当時勤めていた会社を退職し、約2年間ほど職業生活から離れていました。

再びキャリアを再開する際、仕事探しの条件や場所選びには大きな変化がありました。育児とのバランスを考え、より柔軟性のある勤務条件や子育てに理解のある環境を重視するようになったのです。また、育児によってキャリアの方向性にも変化がありました。子供を育てる中で、新しい価値観や興味と出会い、それがキャリアの転換点となることもあり得るということです。教育や子供関連の仕事にも興味を持ち始め、より意義のある仕事を求めるようになっている自分がいました。 

これまで、性別を問わずに数多くの育児とキャリアの変化に直面する方々と話をする機会がありました。その中で強く感じたのは、育児が私たちのキャリアにどのような影響を与え、どのような可能性を開くのかについては、それぞれが異なる視点を持っていることでした。一部の人にとっては子育て期間はキャリアの中断や停滞を意味し、他の人にとっては新たなキャリアの道を開く機会と捉えていました。

変化は必ずしも容易ではありません。ただ、変化を各々が自分なりに受け入れ、適用していくことで、私たちはより多様なキャリアと人生を築いていくことができると私自身は理解しています。 

キャリアを再設計するためのステップ

育児と仕事のバランスを取る中で、多くの方々は自身のキャリアを再考し、再設計する必要に迫られます。これは、単に仕事の量や時間を調整することだけでなく、自分自身のキャリアの方向性を根本から見直すロセスです。以下に、私が実践したキャリアの再設計を効率的に進めるための3つのステップを紹介します。 

1. 自己分析

キャリアの再設計を始める前に、まずは自分自身について深く考えることが重要です。自分の価値観、興味、強み、そして育児とのバランスをどのように取りたいかを理解することが必要です。自己分析は、自分自身のキャリアに対する心の内に秘めた望みを明らかにして、今後の方向性を決定する助けとなります。自分の強みを理解する上で「ストレングス・ファインダー」を活用したことは大いに役立ちました。診断を通じて自分の強みを発見できただけでなく、日々の仕事や人間関係に活かすヒントを得ることができました。 

2. 目標設定

自己分析を行った後、具体的なキャリア目標を設定しましょう。ポイントは、その時の自分に何ができるかではなく、何をしたいのかに焦点を当てることです。短期的な目標と長期的な目標を立ててみます。目標はできるだけ具体的で達成可能なものであることが望ましいのですが、明確に落とし込むことができない部分については、その過程で柔軟性を持ち、状況に応じて調整することが重要です。

また、育児の責任とどのように調和させるかを考慮することを忘れないでください。子育て中のキャリア目標は、独身の頃とは異なる次元で考える必要があります。自分自身だけでなく、家族全体のニーズも検討項目に入れた設定が、新しいライフステージでの成功への鍵にもなります。 

3. 行動計画の作成

目標が定まったら、それを達成するための具体的な行動計画を作成します。これには新たなスキルアップの必要性、ネットワーキングの機会、職場での役割の変更などが含まれるかもしれません。私の経験から、計画はある程度の柔軟性を持たせることで自分に変なプレッシャーをかけてしまうことを軽減できるだけでなく、予期せぬ状況に適応できるため子育てをしながらのキャリア継続のためには不可欠であるように感じています。

この柔軟性によって計画が流動的になることで、時には方向性が不明瞭に思われるかもしれませんが、その流動性こそが育児とキャリアの両立において重要な役割を果たします。子育てには予想不可能な要素が多く含まれていることを踏まえると、日常生活でも柔軟性と忍耐力が求められます。突然の子供の病気や行事など、計画外の事態にも対応できるよう心にも余裕を持たせることが幸せへと繋がります。 

育児とキャリアを両立するために必要なサポート体制の構築

育児とキャリアの両立は、簡単な道のりではありません。成功のためには、周囲のサポート体制を賢く利用し、構築しておくことが大切です。プロジェクトマネジメントで例えるならば、リソース管理やリスクへの対処時の役割分担を決めるプロセスになります。ここでは、代表的なサポート体制を構築する方法を皆さんと共有します。

家族との連携

最も基本的な、頼れるサポーターとして挙げられるのが家族です。配偶者、パートナー、または他の家族メンバーとの連携は、日々の育児や家事、さらには緊急時の対応計画において重要な役割を果たします。家族内での役割分担やスケジュール調整を通じて、お互いをサポートする体制を築くことが重要です。住んでいる地域によっては自然災害やその他の緊急事態に備えて、保育園や小学校などの教育機関に複数の連絡先の提出が求められることがあります。そのため、家族で事前に連絡先なども確認し合っておくことが望ましいです。 

職場のサポート

職場でのサポートも欠かせません。人事部や上司など社内関係者とのコミュニケーションを通じて、柔軟な勤務体制や緊急時の対応策について確認しておきましょう。リモートワークの導入やフレックスタイムの課長、必要に応じて業務量の調整など、職場の理解や協力を得ることができると、キャリアの継続の手助けになります。社内で自身のニーズに合った制度などがない場合には、具体的な提案を持ち込むことで、職場が対応を検討するきっかけに繋がるかもしれません。もし同じ状況にある同僚がいる場合には、共通のニーズを持ち上げることで、職場のサポート体制の改善を団結力を持って働きかけることができます。 

社内外のコミュニティの活用

職場内でのサポートが限られている場合、社内外のコミュニティも大きな支援となります。地域の育児支援グループや、近年はオンラインのフォーラムやセミナーなどを活用することで、同じ立場にある人たちからアドバイスを受けたり、さまざまな育児のコツや対処法を学ぶことができます。私も時間の許す限り社内外のコミュニティに積極的に参加することで、不安や孤独感を和らげ、より豊かな育児ライフを過ごしています。 

プロフェッショナルなサポート

時には、専門家のサポートを求めることも重要です。カウンセリングサービスやキャリアコンサルタントなど、プロのアドバイスを受けることで、自分の状況に合った解決策や方針を見つけることができます。インターネットで関連キーワードを使って検索すると、無料のサービスから有料のオプションまでさまざまな選択肢が提供されていますので、自分に合ったサポートを検討することをお勧めします。私の場合は、キャリアコンサルタントなどの資格を所有しているIT業界の経験、または理解がある方と年に1回以上のカウンセリングを受けています。特に何か問題が生じてからではなく、普段から定期的に受けることで自分では気づいていない意外な点に気づくことができたり、将来の可能性をさらに広げることができます。 

メンタルヘルスの維持も必要不可欠

メンタルヘルスの分野において私は専門家ではありませんので、ここで提供する情報はあくまで参考としてご覧いただきたいと思います。 

育児とキャリアの両立は、精神的にも大きな挑戦になってきます。私も子供が生まれたばかりの時は、こんなに時間的にも精神的にも負担がかかるものなのかと驚いたことを今でも覚えています。子供は成長することで自立していき、コミュニケーション能力なども向上します。そのため、成長度合いによって子供に対し、少し離れた立場をとることができるようになるかもしれませんが、成長したことで新たな課題や心配事をもたらすこともあります。例えば、学業のプレッシャーや進路決定など、親としてのサポートの形は変化しますが、その必要性は続きます。親の役割は、子供の年齢と成長と合わせて進化し続けるものです。 

一方で、自己ケアが後回しになりがちです。メンタルヘルスの維持についても、個人差があるため、実際には自分自身の身体と精神の状態を理解し、それに基づいた管理を行うことが必要です。 

自己チェック

十分な睡眠、バランスの取れた食事、リラックスの時間を確保することが大切です。産後は一人になれる時間を確保することが難しいかもしれませんが、周りのサポートを得ながら自分自身を大切にする時間を持ち、心身のバランスを整えることを意識的に行いましょう。 

ストレス管理

育児と仕事のプレッシャーは、避けられないストレスを引き起こすことがあります。ストレス管理のテクニックを学び、日常生活に取り入れることが大切です。深呼吸、軽い運動などが有効であることが知られています。 

専門家への相談

体調不良が続いたり、心配な場合には早めに専門家に相談することが重要です。 

最後に

本コラムでは、私が育児をしながらキャリア形成をする過程で学んだ教訓とアドバイスをお伝えしました。これらの情報が皆さんにとって何らかの助けになれば、それは私にとって大きな喜びです。育児とキャリア形成を両立させる旅は続きますが、私たちは一歩一歩、理想に近づいていけると信じています。 

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