【保存版】職務経歴書が魅力的に見えないのはなぜ?伝わる職務経歴書をつくる7つのポイント

2021年9月14日

合同会社エンジニアリングマネージメント 社長 兼 流しのEM

久松 剛

2000年より慶應義塾大学村井純教授に師事。動画転送、P2Pなどの基礎研究や受託開発に取り組みつつ大学教員を目指す。博士課程(政策・メディア)修了。その後高学歴ワーキングプアを経て、2012年に株式会社ネットマーケティング入社。マッチングサービス SRE・リクルーター・情シス部長・上場などを担当。2018年にレバレジーズ株式会社入社。開発部長、レバテック技術顧問としてエージェント教育・採用セミナー講師などを担当。2020年より株式会社LIGに参画。海外拠点EM、PjM、エンジニア採用・組織改善コンサルなどを担当。現在は合同会社エンジニアリングマネージメント社長 兼 流しのEMとして活動中。X(@makaibito

今回より連載を担当することになりましたLIGの久松です。IT界隈を歴史やエピソードベースで整理し、人の流れに主眼を置いたnoteを更新しています。

私は2000年からP2P、動画転送といった情報基盤についての研究を開始し、博士号取得後にビジネス業界へと転身してきました。インフラエンジニアを本業にしつつ、なし崩し的に始めたエンジニア採用業務は2021年7月で10年目に突入しました。ただ面接をしていただけでなく、いなくなった人事採用担当の代わりに窓口を担当していたこともあり、今でいう採用広報や書類審査、オファーまで一通りを経験してきました。

現在は日本のみならず、フィリピンやベトナム拠点のエンジニアリングマネージメント(EM)業務や、顧客の採用・組織改善(T&O、Talent&Organization)コンサルなども手掛けております。

実は「レバテックLAB」を運営するレバレジーズは前職でして、アルムナイとしての執筆です。

今回はこれまで数え切れないほど読み、時に赤入れをしてきた職務経歴書を基に、伝わる職務経歴書についてお話します。

履歴書・職務経歴書は自走する

カジュアルなスカウト媒体の登場、SNS採用やリファラル採用の台頭により、履歴書・職務経歴書の持つ役割は一見薄まってきたように捉えている方も多いかと思います。しかし、これらの書類を読みやすく整えておけばキャリアの歩みが見えてくるため、「当該ポジションに合いそうだ」「ご本人のこれまでのキャリアとは違うけれど、◯◯のポジションが打診できそうだ」という発想につながります。

スカウト媒体の場合、スキルや経験について該当する項目をクリックして表現するサービスが多いですよね。これはユーザーには使いやすく、かつ企業には検索されやすいために効率的ではあります。しかし現在本人が自覚しているスキルについてマッチングが行われるため、ジョブチェンジやキャリアチェンジを期待しにくいという特徴があります。

一方で作り込まれた職務経歴書を応募先企業に渡したり、紹介会社やヘッドハンターなどに渡したりしておくと「この人はこういう業務も可能なのでは?」と新しい切り口でキャリアを提案してもらえることがあります。これまで何件もこれらの書類をきっかけとするジョブチェンジ、キャリアチェンジを後押ししてきました。

実は私自身が職務経歴書を読んでいただいた方々の提案がきっかけでキャリアチェンジをしてきました。最初の転職ではSRE・情シス部長からエンジニアリングマネージャー職、2回目の転職ではT&Oコンサルと海外展開といった転身のチャンスに繋がりました。

このように履歴書・職務経歴書を作り込むと本人の預かり知らぬところで自走し、新しいキャリアの観点を得ることができます。

魅力的な職務経歴書をつくる7つのポイント

ポイント1:とにかく見やすく書く

巷にある職務経歴書の書き方の方法論として「2枚に収めましょう」というものがありますが、これはキャリアの中で業務内容が代わり映えしない場合の目安だとお考えください。ITエンジニアの場合、2枚に収まる方というのは経験年数が2年未満の方だと捉えています。

SIer・SES・フリーランスであれば案件、自社サービスであればサービス内容やアピールできる施策(API更新やシステム移行などのイベントも含む)を書くことで、何をしてきたかを伝えることができます。きちんと読みやすくまとまってさえいれば、10ページでも問題はありませんし、人となりが解像度高く理解できるので歓迎です。

時系列は新しいものから書くことをおすすめしています。一般的に職務経歴書は頭から読んでいくため、前方にあるものが先に頭に入ってきます。例えば経歴が20年くらいある方の場合、2000年から話を始められても昔話に感じられてしまい、現在に近づくまでに何ができる人なのか分かりにくくなります。

キャリアチェンジした方は更に注意が必要で、現在応募してきたポジションとの関連性が全く無い場合などは「違うポジションへの応募では?」などと思われてしまいます。例えば営業からエンジニアにキャリアチェンジした方の場合、最初に「営業をしていました」から始まると驚いてしまいます。

ある程度経歴が長い方は、表組みや段落組みを利用して見やすく伝えましょう。転職経験のある場合やキャリアチェンジした場合は、その都度明確な区切りを入れましょう。特に情シスやヘルプデスクに応募される方の体裁崩れは絶対にNGです。業務の中で一般社員が「Officeの使い方が分からない」と質問が来た際に答えられないだろうなと思われてしまいます。

主張したいポイントには下線を引いたりすることも重要です。過去に一面下線が引いてあった方がいらっしゃいましたが、勉強ができない受験生の教科書を見てしまった思いがしました。本当に伝えたいところだけに留めましょう。

ポイント2:技術の記載はバージョン番号も含めて明確に

技術表記はきちんとしましょう。JavaScriptをjavascript、MySQLをmySQL、JavaをJAVAなど、細かい表現のミスはときに致命的です。実務でもWarningを無視しそうな印象を抱いてしまうため、企業によってはこれだけで書類NGにするところもあります。

フレームワークやライブラリを利用している場合はしっかりと書きましょう。PHPやJavaなどの場合はメジャーなフレームワークを使っているのか、自社フレームワークを使っているのか、何も使っていないのかで判断が変わってきます。

バージョン番号もしっかりと書きましょう。EoL(End of Life)を迎えたような古い言語やライブラリを現在も使っている場合は正直に書いておいたほうが良いですし、面接などに向けて何故古いバージョンを使い続けていたのか、改修の提案はしたのかなど正直な返答も考えておきましょう。

ポイント3:ポジションは必ず明記 スキルシートの横転はNG

PjMなのかPLなのかメンバーなのか、ポジションは必ず明記しましょう。何も書かれていないとチーム内でどんな役割を担ってきたか判断できなくなり、メンバークラスに見えてしまいます。リーダーやマネージャーを経験している場合、グループメンバー数を書いておきましょう。何名程度のチームなら将来的に任せられるのかが企業がイメージしやすくなります。

職務経歴書としてSESやフリーランスの方が客先に提出するためのスキルシートを出される方が一定数いらっしゃいますが、SESに転職するのでなければ全くもっておすすめできないフォーマットです。これらのスキルシートは何の現場で何の技術を使っていたかという項目は分かりやすいものの、どうしても一作業者に見えてしまいます。

ポイント4:細かくて良い アピールできるものはすべて書く

上位の職位を狙う場合や、自社サービスを受ける場合は、業務遂行の上で工夫した点や、障害対応を乗り切った話などを書くのも有効です。

業務効率化の経験がある場合、

  • ・どのような状態の・何の作業を
  • ・何を用いて
  • ・自分自身はどのような動きをして
  • ・何時間掛かっていた作業が何時間に削減されたか
  • ・(できれば)その効率化によって、いくら(わかれば具体的な金額も)削減できたか

といったことを書くと印象が格段に良くなります。

採用の経験などもエンジニア採用難の現在では好ましく受け取られます。この場合も、採用に当たって工夫した点、人事との連携具合、実績としての入社者数などを記載すれば更に説得力が増します。

新卒・中途・業務委託といった人たちの受け入れ時のオンボーディングの工夫なども高いポイントとなります。オンボーディングのためのドキュメントをまとめた、スムーズに戦力化するための教育を行った、メンターをしたなども好印象です。明確なリーダー職でなかったとしても、記載できるエピソードはある方はいらっしゃるのではないでしょうか。

アクセプトされた研究論文などをお持ちの場合、学術的な成果として認められるためしっかりと記載しておくことをおすすめします。業務外の活動も記載しておくと良いでしょう。勉強会の登壇経験などがあればURL付きで記載しておくと良いでしょう。また、情報発信をしているPodcast、YouTube、Qiita・note・ブログなどがあればそれも載せておくと意外なオファーが得られます。かく言う私もnoteがきっかけでLIGにオファーを頂きましたし、Podcastきっかけで転職した友人もいます。社外向けの広報も期待できるというのがポイントになりやすいですね。

ポイント5:嘘は厳禁

嘘を書いたり、虚飾したりしないでください。

職務経歴書を出す目的は内定を得ることではなく、次のキャリアを歩むことにあります。仮に入社まで嘘を突き通せたとしても選考時のエピソードを基に配属が決まることもあるため、辛い目に遭う可能性が高いです。

これからやろうとしていることを、さもやったことのように書くのももちろんNGです。時折未経験の方で「入社までにはやるつもりだった」ことを記載される方がいらっしゃるのですが、それも同様にリスクでしょう。事実に基づいて書く。そして書いて良いのは意気込みまでです。

ポイント6:余計なことは書かない

別に書く必要がない情報や、書くことによって心象が悪くなってしまうものもあります。

駆け出しの方に見られるのが「読んだ本リスト」「読んでいる本リスト」です。冊数が少なければ、「これだけしか知らない」と思われる可能性が高いでしょう。また、経験者エンジニアはリファレンス的に専門書を使うことが多いので、「読破した」「何度も読んだ」はそこまで重要ではありません。自己啓発本に至ってはリスクです。何を読んだかではなく、その結果どの程度の理解とスキルが身についたかということが重要です。

ポイント7:定期更新を忘れず

職務経歴書は転職のたびに0から作るものではなく、継ぎ足していくものです。これまでお話してきたように、関わったプロジェクトや工夫した点を書いていただきたいのですが、いざ転職時に書こうと思うと多くの場合は忘れてしまいます。自身のキャリアの振り返りに使えるので、半年〜1年に一度、転職の予定がなくても定期的な更新がおすすめです。

番外編:埋もれない履歴書の書き方

職務経歴書に比べて凡庸に見える履歴書にもポイントはあります。

もしご自身の経歴に正社員、契約社員、派遣社員、アルバイトなどの複数の契約形態がある場合は、括弧書きなどで分かるようにしてください。正社員以外の場合は契約期間が短くなりがちですが、それが分からない職歴は転職を繰り返しているように早合点してしまうリスクがあります。

職歴欄にインターンの経歴を書かれる方も注意が必要です。特段契約と呼べるものではないので書かなくて良いのですが、有名企業を並べたい気持ちは分からなくもないです。ただしこちらもインターンである旨を明記してください。1ヶ月以内に短期離職を繰り返しているように見えます。

同様に経歴にブランクがある方も何をしていたのか一筆書いておくのが良いでしょう。厳しい会社ではブランクがあるだけでで書類を落としますし、もし通したとしても面接で聞かれるので先に書いておいたほうが効率的です。

巷に流通している履歴書に必ずついている志望理由欄についても、複数社に応募する場合は各社ごとにカスタマイズすれば全く問題ありません。しかしどこに出しても通る当たり障りのない文章を書いたり、ブランクのまま出すくらいであれば、志望理由欄ごと削除してしまいましょう。過去に、志望理由に見覚えのないミッションへの共感が書かれていたので面接で質問したところ、競合他社に出す予定のものだったということがありました。指摘したところ、ブランクの履歴書へと交換されました。

まとめ

いかがでしたでしょうか。10年に渡って読み続けた職務経歴書の束から感じた読みやすさと違和感をご紹介させていただきました。

最後のポイントですが、提出はフォントを埋め込んだ状態のPDFにしましょう。WordやExcelをそのまま提出するのは改変できてしまうので良くありません。面接官がGoogle Docsのような別アプリで開いた際にレイアウト崩れを起こす可能性もあります。

レバテックでも実施しているように、人材紹介会社では履歴書や職務経歴書に赤入れをしてもらえるところがあります。実際に複数の職務経歴書を読んできている方々に意見を求めるのもおすすめです。

関連リンク
https://note.com/makaibito/n/nd196aa0cef1c
https://anchor.fm/rtlaboradio/episodes/ep-3makaibito-edj4au/a-a23lglh

イラスト:Jonnas CHEN

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