連続起業家が考える、1人目PMの面白さとキャリアアップの道筋とは【開発PM勉強会レポート】

2022年10月4日

PM Club主催者 連続起業家

Shin Sasaki

日本最大級のプロダクトマネージャー用コミュニティ「PM Club」を主催し、日本にプロダクト作りの人材を増やすべく尽力している。また、Web3領域のシンガポール法人W3 FORTUNE PTE. LTD.では共同創業者CPOを務め、保護猫NFTプロジェクト「CatRescue」を展開中。過去にスタディサプリの立ち上げメンバー、起業&事業売却などを経験。

IT業界のプロダクトマネージャー、プロジェクトマネージャーのための相互学習コミュニティ『開発PM勉強会』。8月30日に開催されたイベント「開発PM勉強会 vol.14」のテーマはプロダクトの1人目PM

連続起業家でありながら、日本最大級のプロダクトマネージャーのためのコミュニティ「PM Club」を主催しているShin Sasaki(Twitter:@shin_sasaki19)氏から、プロダクトマネージャーの仕事に対するよくある誤解と、多くの方が悩みを抱えているのであろうキャリアアップの道筋について解説していただきました。

プロダクトマネージャーは「何でもできるスーパーマン」ではない

もそも、プロダクトマネージャー(以下、PM)の仕事とはなにか?日本では、PMに期待するスキルは、複雑で多岐にわたる。ビジネスの設計、データ分析、マーケティング、開発チームのマネジメント、プロダクト開発の隅から隅まで担うことが期待されて、業界や企業によっては、PMの仕事範囲は大きく違うことも珍しくない。

ただ、この現象は日本だけのことだとSasaki氏は指摘する。「日本では、PMの役割はまだ体系化されていないので、なんでもできる『スーパーマン的な役割』を求められてしまいます」という。

しかし、本来のPMの役割とは、顧客課題を特定し、プロダクトの方向性を定めることだと言われている。Sasaki氏は「他の領域のスキルを持っていることが強みに繋がる場合もありますが、『〇〇のスキルも持っていなければ、PMになれない』なんてことはありません。誰もがスーパーマンになる必要はないのです」と話す。

▲PMに期待されることの一覧。しかし、枠線の中こそPMの本来の役割だという

圧倒的に成長できる!1人目PMが味わえる醍醐味

1人目PMが参画するのはスタートアップ企業や新規事業の立ち上げ時などが多く、やりたいことに対して人材も知見も足りず、カオスな状態がほとんどだ。しかしSasaki氏は、「だからこそPMとして最も面白いフェーズも絶対に1人目!」と断言している。

大企業なら、プロダクトごとにPMがいることが多く、担当するプロダクト内でしか意思決定ができないことがよくある。一方で、組織の0→1、1→10のフェーズにPMを務めることで、プロダクトの方向性を決定する重要な意思決定をたくさん行うことができる。この「圧倒的な意思決定の質と量こそが、PMの成長を決定するものである」という。

意思決定には精度の高い仮説が求められる。仮説の質を高めるには、意思決定の経験を多く積むのが一番だ。精度の高い意思決定を繰り返すことでプロダクトスケールさせると同時に、スケールするプロダクトに関わることでさらにPMとして良い経験を積むことができる。スタートアップの1人目PMになることで、個人と組織の成長にとってポジティブな循環が出来上がるのだ。

さらに、開発組織の編成やチームメンバーの採用、初期のユーザーインタビューなどに幅広く関わることで業界への理解も深まる。このように、意思決定を任される場面が多く、プロダクトの大きな方向性も決められる1人目PMはまさに成長に適した環境だといえよう。

▲1人目PMだけが味わえる醍醐味

1人目PMに対する「よくある5つの誤解」

述の通り、PMの役割に関してまだ体系化されていないことが多く、世間に誤解されていることは無数にあるという。Sasaki氏は1人目PMとして誤解されがち・誤解しがちなことを5つにまとめている。

▲1人目PMのよくある5つの誤解

・PMはマネージャーではない

PMはプロダクトのマネージャーであり、チームのマネージャーではない。PMだから、部下のマネジメントや評価、タスク管理などの業務を全部任せてしまうと、本来行うべき業務に取りかかれなかったり、高い離職率にも繋がりかねない。とくに小規模な組織だと、マネジメントを行うマネージャーが不在の場合も多いので、そういう状態に陥らないように注意が必要だという。

・PMはミニCEOではない

PMはプロダクトの方向性を決める存在であり、責任範囲はプロダクトの質と課題解決である。PMがいるからといって、プロダクトにかかわるすべての雑務を任せられる「免罪符」になるわけではないのだ。

・PMはエンジニアの管理者ではない/PMはエンジニア出身者しかなれない

PMを採用する際に、「エンジニアをマネジメントしてほしい」と訴求する企業はよく見かけるが、これも大きな誤解だという。エンジニアのコード管理や工数管理などはCTOやテックリードの役割であって、PMとは異なる専門性が求められる。

それと対になって、「エンジニア出身者しかPMにはなれない」ともよく勘違いされているが、PMにとってエンジニアの経験は必須ではない。実際Sasaki氏自身もエンジニアリング経験が1年しかなく、エンジニアのマネジメントが必要な場面においては、テックリードなどと相談しながら進めているという。

・どんなPMも正解は知らない

プロダクト開発は仮説だけで始めることはよくないと言われるが、実際プロダクトがリリースされるまで、仮説が正しかったかどうかを検証することはできないのだ。どんなに経験豊富なPMでも、自分の仮説が必ず成果につながると確信できるわけではなく、プロダクトの成否をPM一人の責任に押し付けるのは良くない。

ただ、良いPMであれば、クイックにPDCAを回したり、ユーザーのフィードバックを頻繁に吸い上げたりすることを通して、仮説の精度を上げられる。

1人目PMがキャリアアップするには?キャリアパスを解説

Sasaki氏はここで、「PMはレベル別に4分類される」とし、経験年次から求められるスキルレベルを分かりやすく整理した。

▲経験年次ごとにPMに求められるスキルアップ

PMのキャリアアップには、専門性を高め、「〇〇マネージャー」の肩書きを持つようなプロフェッショナルになっていく必要がある。アメリカなどではすでに普及されているが、事業開発に強みをもった方は「ビジネスPM」、エンジニアリンクスキルやエンジニアマネジメントに強みを持った方は「テクニカルPM」のような、専門性を尖らせたPMを目指し、その先にCOOやCPO、CTOになるキャリアパスが描けるという。

▲PMの専門性とその先に辿れるキャリアパス

すでに持っているスキルをグロースしたり、自身の特性を活かしてスキルを身につけたりして専門性を高めると、プロダクトの質もおのずと高まるという。Sasaki氏はセッションの最後に、「プロダクトの質が高まって成長するとともに意思決定の質も成長し、自分自身もPMとして成長していく。自分が成長するために、プロダクトを成長させていきましょう」とPMの皆さんへのエールを送り、セッションを締めくくった。

Q&A:新規サービスのプロモーションはPMの役割なのか

セッション後の質疑応答タイムでのSasaki氏の発表に質問が寄せられた。

Q:新規サービスのプロモーションやグロース方法を考えるのはPMの役割ですか?

A:これらの職種にはPMとはまったく違うスキルが求められるので、「PMの役割か?」と聞かれると、僕は「違う」と答えます。

ただ、スタートアップなど、まだ体制が整っていない企業では事業開発とプロダクト開発の分野が明確に分かれていない場合も多いので、1人目PMが広報やマーケティングの役割を担うケースも多いです。

もちろん、PMとしてプロダクトの質を高めることに興味・関心を持っておくことが望ましいです。なので答えとしては「プロモーションができなければPMになれないわけではないけれども、できれば強みになる」というのが妥当な答えかなと思います。

Shin Sassaki氏のTwitter:@shin_sasaki19

文:成澤綾子

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