ARグラス「Nreal Air」でハイブリッドワークのお悩みを解決【エンジニアのガジェット何でも相談室】

2022年8月24日

ガジェットコラム「エンジニアのガジェット何でも相談室」は、ITエンジニアが日常の開発・生活のなかで抱えがちな悩み、要望をアンケートで収集し、テクノロジージャーナリストのIttousai氏にガジェット情報で解決していただきます。

テクノエッジ編集長

Ittousai

テックメディア『テクノエッジ』編集長。元Engadget日本版ファウンディングエディター。好きなオーディオ機器はソニーROLLY。

初めましての方は初めまして。そうでないかたは毎度どうも。自称テクノロジージャーナリストの売文屋 Ittousai と申します。

以前は Engadget 日本版という媒体にかかわっておりましたが、現在はテクノエッジという新しいテクノロジーメディアを運営しています。

主な興味範囲はスマートフォンやPC、ウェアラブルにVR / ARなど、プロダクティビティからゲーミングまでのコンシューマー向けデバイス、サービス、およびエマージングテクノロジー全般。

分野問わず節操なく飛びつきますが、どちらかといえば「所有する歓び」や「人生を豊かにする上質な道具」方面よりも、まだ見ぬ新しいもの、モノになるか徒花に終わるか分からない新奇なものを真っ先に試したい、早口で伝えたいと思ってまいりました。

このたびのお座敷は「何でも相談室」ということで、エンジニア諸氏の相談に真摯に向き合い、相談する前より悩みが増えるような回答を心がけてゆこうと思います。

相談その1:「最小のロードアウトで、どこでも効率よく作業したい」

お題は「何でも相談室」ですが、何しろ初回なのでまだお悩みを募っておらず、誰にも相談されていないため、とりあえずは回答ありきのシンセティックなお題を捏造しました。長い前置きが続くため、まずはモノを出せという方は、目次から下のほうまで飛ばしてください。

「最小のロードアウトで、どこでも効率よく作業したい」

初手から見慣れないカタカナが出てきました。本題の前から脇道にそれますが、ロードアウト( Loadout) とは「持ち歩く道具のセット」程度の意味。元々は兵士が携行する装備の組み合わせを指していました。ゲーマーならば対戦ゲームでステージや相手や味方に応じて選ぶ武器やアイテムの組み合わせの意で使っているかもしれません。

今回は単に「最小ロードアウト」=「軽装」程度の意味。わざわざ用語を使うのは無理やり普及させようと画策しているからです。

なぜロードアウトと言いたがるかといえば、ガジェットなり製品を評価するにあたって、単体での漠然とした「総合評価」に便宜以上の意味はなく、道具は個別具体的な用途において、使われる組み合わせを踏まえて評価すべきであり、ロードアウトはその基礎概念となるからです。

たとえば汎用性と互換性は大きな評価軸の1つです。しかし、自分の環境や組み合わせ次第で100点になり得るものを、他の誰かの別環境で使いにくいことで「総合30点」や「二つ星」にされれば良いものを見逃してしまう可能性があります。言い方を変えれば「万人向けとか知ったこっちゃねえ」。

特に外出時に持ち出す製品の場合、同時に持ち歩ける製品のサイズや重さには物理的な制約があることから、可搬性や他の製品との組み合わせに対する評価は、自宅で据え置き利用する場合とは大きく異なってきます。

作業効率と可搬性のせめぎあい、または「今日は持って出なかったわ」

リモートワーク、ハイブリッドワークの普及により、仕事は環境の整った職場や自宅のデスクでするものという前提は過去のものになりつつあります。などと言うまでもなく、どこでも作業ができる環境を持ち歩きたい、でも荷物は減らしたいという欲求はある種の人にとっては根源的なものです。

そうでなくても、徒歩や公共交通機関での通勤が多い日本では軽量なノートが持て囃され、ヤード・ポンド法の国ではピンとこない「1kg / 2.2ポンドを切っているか」を基準にしたり、もとから想定顧客でない人でさえ「1.x kgのノートなんて!肩が抜ける!」とばかりにジャッジする風潮が続いてきました。

自宅以外でもお仕事したい、気軽に環境を変えたい、移動中の時間も有効に使いたいニーズはリモートワークの普及でさらに強くなっています。だた、伝統的に「使いものになる」最小セットとして必要だったのはやはりノートPC、または同等のタブレットと入力機器の組み合わせ。

業務内容にもよりますが、コーディングやプロダクティビティ用途の効率からはディスプレイにある程度の広さと視認性が必要となるために、超小型のPCであったり、高解像度画面のスマートフォンがあっても、画面の小ささは如何ともし難い。すなわち持ち歩く画面の大きさが作業効率を規定する状態、荷物のフットプリントがそのまま作業効率につながる時代が長らく続いてきました。

人間の手の大きさに規定されるキーボードには多種多様な折りたたみ製品や小型軽量な製品、左右分割式等々があり、可搬性の高いものをお好みのままに選べます。しかし、PCライクな作業向きの広さのディスプレイで折りたためる製品はなかなか実用域に降りてきません。

(例外としては世界初の折りたたみ画面PCこと ThinkPad X1 Foldがあり、使ってみると実験機とは思えない完成度と質感にうっとりする素晴らしい製品ですが、画面は畳めても当然ながら重さは半分にならず、定価は約40万円です)。

▲ARグラス・Nreal Air( ブラック )(税込)¥45,980

無駄に千万言を費やしてきましたが、つまりはモバイル機器の目覚ましい進歩にもかかわらず、人間側の条件が変わらないために、「仕事用バッグでノートやタブレットとキーボードを持って出た日はどこでも作業できる。ただ、大きめの画面が入らない軽装だったら、スマホと小物だけでは効率が悪く埒が明かない」状態が長らく続いてきました。

ニッチなモバイル愛好家方面では、様々な工夫や努力が続いており、いわゆるヘッドマウントディスプレイをモニターの代わりにしたりしています。たとえば「Meta Quest 2」とキーボードの組み合わせで全天周囲モニターVR作業環境構築を試みたり、数年前の発売時には不評で市価も下がりきっていたヘッドマウントディスプレイ「 Avegant Glyph」 が、周囲の明るさに依存せずくっきり見えるモニターとして、何故かリバイバルで売れるといったこともありました。

とはいえVRヘッドセットもGlyphも、改造でもしないかぎり持ち歩きやすいとはいえず、可搬性でいえば薄いカバンに入るだけノートのほうが優れるともいえます。

ARグラス・Nrealシリーズ新作「Nreal Air」

といった状況の中で現れたのが、ARグラス・Nrealシリーズの新製品「Nreal Air」。一見したところやや大きめなサングラス程度で、スマホやPCに接続すれば、仮想のフルHD大画面が視界に浮かぶ製品です。公称では「4m先に130インチの大画面」という。

当初は au やドコモが販売したように、製品としてはあくまでスマホ周辺機器の位置づけ。専用アプリを使ったMR (Mixed Reality)体験や、いわゆるビデオグラスとして動画視聴やエンタメ用途、昔ながらの「かければそこがプライベートシアター!」を訴求しています。

しかしこれまでの「メガネ型ディスプレイ」のなかでもピクセルが見えるほど表示が鮮明であること、かつプロダクティビティ用途には最低限欲しいフルHD解像度が備わっていること。さらに、スマホ以外でも汎用USB-C接続モニターとして使えること、一般的なメガネケースに入る大きさから、「サングラス大のモバイルモニター」として、すなわちノートPCやタブレットを持ち歩かない軽装時でも使える大画面モニターとして、軽装ロードアウトの可能性を飛躍的に広げる力を秘めています。

初代「Nreal Light」との違い、簡略化

Nrealシリーズには機能的に上位の初代製品「Nreal Light」もあり、サングラス大でフルHDモニターになる点はすでにクリアしていました。

しかしNreal LightはAR機能を重視していたこと、初代製品としてまだ洗練されていなかった部分もあり、新製品のNreal Airとはいくつか違いがあります。

大きなものを挙げると、

・Nreal Lightは複数のカメラ搭載。スマホアプリ連携で6DoFトラッキング等のAR向け機能が使える一方、サイズはやや大きく、重量はやや重く(100g超)、スタイルもレンズが目立つなど若干サイバーパンク風の物々しさがある

Nreal Airはカメラを搭載しないためその分軽い(76g)。スタイルも一般的なサングラスに近い

Nreal Airはディスプレイの輝度が大きく向上(Lightの280ニトから400ニトへ)。シースルー型で周囲の環境光の影響を受けること、人間の目は暗ければ分解能が落ちることから、輝度の高さは特にテキストの視認に重要

・スマホやタブレット、PCと接続する有線型は共通ながら、Nreal Lightで直付けだったUSB-Cケーブルは Nreal Air で着脱式に。取り回しが大きく向上し、付属ケーブルはコネクタにアングルがつき柔軟になった

・Nreal Airはシンプルな機能になったこともあり、電力消費もLight比で低下

・すばやく画面をオンオフするボタンを本体に追加

一方、カタログスペックとして初代の Nreal Light のほうが優れているように見える点として、

・表示部の視界の広さ(Field of View、 視野角)がNreal Lightは52度、Nreal Air は46度。新製品は表示部分がやや狭くなっている

ことがあります。

視野角は、現実の視界にデジタルオブジェクトを重ねるAR用途においては、周辺視野をカバーできるか、仮想オブジェクトが不自然に視界の中で途切れないか等で重要です。ただ、単なるモニターとして考えた場合、狭いほうが視線を大きく動かさずに隅々まで視認でき、高精細になるため使いやすいともいえます。

仮想でないモニターでも、動画はともかくテキスト作業においてはフルHD 55インチや42インチより、24インチや13インチのほうが使いやすいことと同様です。

そして最大の差は、Nreal Lightが6万9799円であったのに対して、Nreal Airは4万5980円と、先代よりも大幅に購入しやすくなっていること(いずれもauオンラインショップ価格)。

付属のケースは保護を優先した大きめのカプセル状ですが、市販のサングラスケースに入れればそれこそ小さなバッグでも、ジャケットのポケットでも持ち歩けるサイズです。

電源は有線接続したデバイスから得るため、こまめに本体を充電する必要も、ウェアラブルの充電にはつきもののアダプター等を持ち歩く必要もありません。

付属のUSB-Cケーブルすら専用ではないため、柔軟である程度の長さがあれば、他の機器と共用にして持ち歩きを減らせます。

実際の使い方・使い勝手

Nreal Air本来の使い方としては、スマートフォン用の専用アプリ「Nebula」があります。

Nebulaを使えばヘッドトラッキング併用で仮想ウィンドウを数枚並べたMRモードや、スマートフォンをレーザーポインタのように使ったインターフェースで動画の視聴やウェブブラウズ等が可能です。

一方で、MRモードはブラウザウィンドウを並べて実現する独自環境のため、ウェブアプリしか使えない。ヘッドトラッキングには加速度計やジャイロを使うため、交通機関内などでは画面がすっ飛んでゆき使い物にならない。レーザーポインタ式のタッチ操作は、あくまでリモコン的にブラウズやコンテンツ消費向けといった制約もあります。

今回提案する「Nreal Air」の使い方は、スマートフォンやタブレット、特にiPad、あるいはUSB-C映像出力に対応するミニPCと接続してパッシブな「メガネ型モバイルディスプレイ」にすること。

出力機器側の仕様に依存するものの、ただヒモつきサングラスを掛けるだけで、ピクセルまでくっきりと見える鮮やかなフルHDディスプレイが目の前に浮かびます。かつシースルー型なので、手元のキーボードやマウスや資料、あるいはスマホも目を落とせば見える。VRヘッドセットのように完全な目隠しではなく周囲も注意できるのは、メガネ型ディスプレイもついにこの価格で実用性十分な製品が出てきたかと感慨に浸るほどです。

注意点としては、Nreal Air自体がメガネであり、見やすい位置にあわせて掛ける必要があるため、「メガネ on メガネ」ができないこと。

ただそのために、本体に取りつけるインサートレンズ用のフレームが付属しており、メガネ店で自分にあわせたレンズをつくって装着は可能です。

実用的なロードアウトの例

シンプルなディスプレイとして使う場合、USB-C (DP Alt Mode)で映像出力できるデバイスならば広く組み合わせられる点も魅力です。

いくつか組み合わせの例と利点・制限を挙げれば、

・Androidスマートフォン

本来の使い方であるNebulaアプリや、ミラーリングで画面そのままを表示できる。Bluetooth接続の小型 / 折りたたみキーボードと組み合わせれば、すべてポケットに入るサイズで、使い物になる画面サイズとPCに近いキーボード、作業環境を実現可能。「ノートやiPadが入るサイズのかばん」がプロダクティビティの必須条件ではなくなる。

手持ちのAndroidスマートフォンが有線の映像出力に対応するかどうか要確認。PixelなどUSB-C映像出力に対応しない製品もある。ミラーリングの場合、スマホの画面縦横比に依存するため本来の表示領域を使い切れない場合も。

Androidのまま利用する場合、あくまでスマホ画面のミラーリングなので、UIやアプリ的にPCライクな使い勝手を実現するのは工夫が必要。

・iPad

iPad自体が大きいため可搬性では落ちるが、組み合わせればiPadはカバンに入れたまま周囲から覗き込まれず使うことも、デュアルディスプレイとして使うことも可能。

特に iPadOS 16から導入されるステージマネージャでは、デュアルディスプレイで複数のアプリを使ったPCライクな作業環境を志向しているため、本格的な作業ができる。

・小型PC

画面が小さなゲーム用UMPC等に接続すれば、持ち歩くセカンドディスプレイとして利用可能。

・ノートPC

ノートを持ち歩くロードアウトの場合も、Nreal Airをセカンドディスプレイとして使える。

ただしNreal Airは見かけ上数メートル先に仮想画面が浮かぶ焦点距離なので、ノートの画面と並べて頻繁に見比べる用途には不向き。ノートを使いつつ、テーブルを挟んだ大きなテレビを見る感覚。

その場合も、ノートの画面を最小限の表示にしつつ、覗き込まれない追加ディスプレイとしてのNreal Airを使ったり、動画再生用に使うといった方法も。

・番外:iPhone

iPhoneはUSB-C端子を備えずDP Alt Modeにも対応しないため、単体での接続は不可。約1万円の周辺機器「Nreal Streamin Box」を有線でNreal Airに接続し、ストリーミングボックスとiPhoneをWiFi接続する方法はあることはある。

しかし、ミラーリングのみ機器間接続にWiFiを使うなど制約も多く、何よりひとつアイテムが増えてしまうため、軽装でのプロダクティビティ目的には不向き。

Galaxy / Dexが大勝利

特におすすめなのが、サムスン Galaxy シリーズとの組み合わせ。Galaxy シリーズの一部は外部ディスプレイに接続して使うPCライクな環境 Samsung Dex を備えているため、Nreal Airに接続すれば表示領域をフルに高精細で使い、アプリもPCライクなマルチウィンドウ・マルチタスクができ、スマホ画面をタッチパッドとして使えるなど最適な組み合わせになります。

普段からDex対応のGalaxyスマートフォンを持っているなら、好みの折りたたみキーボードとNreal Airという、小さなパースやジャケットのポケットにすら入る最小セットで、ほぼPCライクな作業がどこでも、それこそ公共交通機関のなかでも使えることになるのです。

結論

ノートPCやタブレットを常に持ち運ばなくても、サングラスを持ち歩く感覚でNreal Airを手荷物に忍ばせれば、置く机も不要で人から覗き込まれない高精細なモバイルモニターがどこでも使えるようになります。

プロダクティビティ用途に使わなくても、動画視聴用やゲーム用として十分実用的。

手持ちデバイスと組み合わせたロードアウトを試すのも楽しく、むしろNreal Airを起点に、活かすためのロードアウト完成のため次のデバイスを選びたくなる、本末転倒な楽しみかたもできる逸品です。

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