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最終更新日:2024年11月8日

同一労働同一賃金における「賞与」の扱い

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「同一労働同一賃金」は、正規社員と非正規社員の待遇差を是正するための制度です。業務内容や責任の範囲が同じなら、基本給や賞与、退職金、手当、福利厚生施設の利用などについて、正規社員と非正規社員の待遇を同じにする必要があります。また、業務内容や責任の範囲に違いがある場合は、その差異に応じた待遇にしなければなりません。詳しくは記事内で解説していますので、ぜひお読みください。

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「同一労働同一賃金」とは

同一労働同一賃金とは、雇用形態の違いによる正規社員と非正規社員の待遇差を禁止する制度です。「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」の第8条から第12条には、契約社員とパート社員について、改正労働者派遣法第30の3から第30の5条には派遣社員について記載されています。

同制度は2016年12月に「働き方改革実現会議」で立案され、大企業は2020年4月から既に施行中。中小企業は2021年4月から施行される予定です。

制度の主旨と目的

労働契約法20条では、以下のように規定されています。

「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない」

同一労働同一賃金にあたる上記の記載は、2020年4月以前に既にありましたが、今回の法改正で判断基準がより明確になりました。
具体的には、賃金項目ごとにその項目が設定された目的を鑑みて、「正規社員と非正規社員の待遇差が合理的かどうか」を判断することが明記されました。
また、基本給、賞与、退職金、手当といった賃金項目以外に、福利厚生施設の利用なども正規・非正規での待遇差を無くすよう記載されています。

参照元:電子政府の総合窓口 e-Gov[イーガブ]
「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」第12条

違反するとどうなるか

同一労働同一賃金のルールは「同一労働同一賃金ガイドライン」に記載されています。このガイドラインには法的拘束力がないため、違反したとしても罰則を科されることはありません。ただし労働者側から訴えられた場合は、損害賠償を行わなければいけないこともあります。過去にも「非正規社員への退職金不払い」で従業員側が訴えを起こし、最高裁が企業へ賠償を命じたケースがあります。

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給与・賞与・退職金に影響

同一労働同一賃金のルールでは、給与や賞与といった賃金項目について、「正規社員と非正規社員の間に責任や業務面で差がない場合、両者に待遇差があってはならない」としています。また責任や業務面などに差がある場合でも、その差を考慮した賃金を支払う必要があるとしています。

また退職金についてはガイドラインに記載されていませんが、先述の通り退職金の支払いを巡る訴訟で労働者側が勝訴したケースがあるので、「正規社員には退職金を支給しているが、非正規社員には支給していない」場合は、従業員へ正当な理由を説明する必要があるでしょう。

賞与の金額は正社員と同じか

賞与額については、「会社への貢献度」が指標になります。
厚生労働省告示第430号には、以下のように明記されています。

「賞与であって、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給するものについては、通常の労働者と同一の貢献である短時間・有期雇用労働者には、貢献に応じた部分につき、通常の労働者と同一の賞与を支給しなければならない。また、貢献に一定の相違がある場合においては、その相違に応じた賞与を支給しなければならない。」

つまり、業務における会社への貢献度について、非正規社員の貢献度が正規社員と同等であれば、同じ額の賞与を支給しなければなりません。貢献度が異なる場合は、それに応じた額を支給する必要があります。

※参照元:厚生労働省告示第430号

ケースによっては待遇差が合理的だと認められることも

正規社員と非正規社員の待遇差が不合理かどうかは、確実な基準が存在する訳ではなく、個別のケースごとに判断されます。

実際に同一労働同一賃金ガイドラインに事業主がガイドラインに記載された原則に反した場合、「当該待遇の相違が不合理と認められる等の可能性がある」と明記されています。
「可能性がある」としているのは、前項で解説した「厚生労働省告示第430号」の記載にあるとおり、従業員の会社への貢献度や責任の重さによっては、待遇差に合理性があると判断される可能性もあるためと考えられます。

賞与自体の廃止は難しい

待遇差を無くすために賞与の支給自体を取りやめたいと考える企業もありますが、現実的ではないでしょう。既に存在する賞与や手当てを廃止する行為は、労働契約法に記載されている「不利益変更」にあたるためです。現状運用している制度を撤廃するには、以下いずれかの条件に当てはまる必要があります。

高度な業務上の必要性がある

たとえば、赤字が数期連続し経営危機に陥っている場合などは、会社の倒産が最終的に従業員に不利益をもたらすため、現行制度の変更が認められることがあります。また賞与に関しては、収支の悪化が見込まれる場合、現状赤字が続いていなくとも制度の変更が認められることもあるようです。

労働者の自由な意思に基づく権利放棄である

労働者側の自由意志による権利放棄があった場合は、現行制度の変更や廃止が認められる場合があります。ただし会社側からの圧力により従業員が権利放棄するケースもあり得るため、「自由意志に基づく権利放棄があったかどうか」は慎重に判断される傾向があります。

※本記事は2020年08月時点の情報を基に執筆しております。

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