2023年4月21日
執筆者
EContent Magazineのコントリビューティング・エディターを経て、2014年よりTechCrunchで企業に関する記事を執筆。過去には、CITEworld、DaniWeb、TechTarget、Internet Evolution、FierceContentManagementなどのメディアでレギュラーコラムを執筆。
ここ数ヶ月、ChatGPTは質問に答えたりコードや絵を作成したりできる大規模言語モデルをベースに構築されたユーザーインターフェース(UI)で、何ができるかを示してきた。それだけでも驚くべきことだが、人工知能(AI)とのやりとりを通して、副産物を調整することもできる。本当にすごいことだが、これを日常的に使っているエンタープライズアプリケーションに応用することで、どれだけ変革的なものになるか考えてみてほしい。
ポイント&クリックする代わりに、依頼するだけでコンピューターがアプリケーションの基本モデルや社内の言語モデルに基づいてあなたのためにタスクを実行するよう、既存のアプリケーションをベースにインターフェースを構築できるとすればどうだろう。
そうなれば、コンピューティングにおけるさらなる大きな飛躍となる。これまでの最大の飛躍は1984年に起きた。Apple(アップル)が、グラフィック要素を用いたUIを導入したときだ。それからコマンド入力方式からのゆっくりとした移行が始まり、やがてWindows 3.1、そして後のWindows 95のリリースによってこのUIは90年代初頭には主流となった。
SiriやAlexaのような音声インターフェースなど、他にもユーザーエクスペリエンス(UX)の試みがあり、消費者側にいくつかの変化をもたらしたものの、コンピュータが私たちのために仕事をすることとは少し異なる。いくつかの答えを見つけ、場合によっては簡単なコマンドを実行するだけだ。
仕事の仕方が変わる。新しいコンピューティングのアプローチが本当に変革をもたらすかを判断する真の尺度はそこにあるだろう。システムに明示的に指示を出す代わりに、「新入社員の入社手続きを手伝って」「月次損益計算書を作成して」といったアクションを入力するだけでよいとしたら、それはUX設計における根本的な飛躍になるはずだ。
生成型AIは、このような飛躍の可能性を秘めている。だた、新しいインターフェースを簡潔に設計し、従来のポイント&クリックのインターフェースに、ボルトで固定されたように感じさせないようにするには、創造性が必要になる。また、大規模言語モデルをより特化させることもおそらく必要だろう。
それでも、現段階の生成型AIは進化し続けるAI分野の一部にすぎず、まだ初期段階にあることを忘れてはいけない。SNSなどがうたう誇大広告の文句がいかなるものであれ、生成型AIがこれから歩む道のりは長い。
10年前、人々は企業向けソフトウェアに家庭電話や携帯電話、タブレットでのやり取りするような体験を期待するようになった。そして今、ユーザーの期待は再び変化しているのかもしれない。ChatGPT風にソフトウェアとやり取りすることを人々は求めるようになるかもしれない。
Cisco(シスコ)のセキュリティとコラボレーション担当の執行副社長兼ゼネラルマネージャー、Jeetu Patel(ジートゥ・パテル)氏にとって、ChatGPTで際立っているのはそのシンプルさだ。
「OpenAIがChatG PTで展開したその使いやすさは、まるで2歳児でも使えるようなものだ。過去のAIシステムは2歳児が使えるような簡潔な設計ではなかったと思う」
これほどシンプルなものをつくるには、時間と思慮深さが必要だとパテル氏は言う。「これからは、UX回りのイノベーションと、特異なユースケースにも適用できる、データのカスタムセットに関するイノベーションを目にするようになるだろう」とも語った。
さらに、パテル氏は生成型AIがより簡潔なUIの構築を実際に支援する未来を描いている。「われわれはまだマルチモーダルと言語モデルの組み合わせが、UIの構築そのものを指示するような、そんな初期段階にあり、そこには多くのチャンスがある」と話した。
そうなれば、あらゆるUIに自然言語の要素が加わり、質問するだけで特定のアクションやアクティビティができるようになるとパテル氏は考えている。
マーケティングに特化した生成型AIソリューションを提供するPersado(パサード)の共同創業者兼COOであるAssaf Baciu(アサフ・バチウ)氏は、このようなUXの変革がやって来ると確信している。「生成型AIは要するに自然言語を通じて機械とやり取りすることを可能にし、ソフトウェアとの関わり方を劇的に変えるだろう」とバチウ氏は話す。
バチウ氏は、私たちがソフトウェアに答えを求めることで、企業向けソフトウェアの使い方を変える可能性があると見ている。
「例えば、Salesforce(セールスフォース)のユーザーが、メールの作成や会議のスケジュリング、次のやり取りの準備といった営業タスクを自動生成できる性能を考えてほしいとしよう。これはChatGPTプラグインのような機能によってさらに進化し、モデルが特定の『機能』に接続することで、ユーザーがタスクを記述するだけで実行できるようになる。例えば、『ステージ2で各四半期に要旨を付け、どの営業担当者に割り当てられたかを簿価総額とともに示すレポートを作成する』という記述も考えられる」とバチウ氏は話した。
プロフェッショナルサービス会社Opus United(オーパスユナイテッド)を創業した同社CEOで、オーディオブランドBeats(ビーツ)の元CMOのOmar Johnson(オマール・ジョンソン)氏によると、AIが企業向けソフトウェアに与える影響について、インターフェースとの関わり方はスタート地点に過ぎないという。「AIはあなたを先読みするようになる。なので、企業向けソフトウェアは、(あなたの働き方を)学習して、あなたの好みを予測して好きそうなコンテンツを送るNetflixのようなプロダクトになる」とジョンソン氏は話した。
そうなれば、今後のソフトウェアに対する考え方も変わってくるかもしれない。「ユーザーに対する考え方を広げることになる。通常、企業向けソフトウェアのユーザーは、所属する部署に深く特化している。しかし、本当に使いやすいものがあれば、実際には専門以外のところにも手を広げられる」とジョンソン氏は語った。それは、マーケティングやオペレーションといった、1つのグループに限定されることなく、社内で動いているワークフローを統合することも意味する。
ただし、これには大きな注意点がある。私たちはまだこうした動きのすべてがどこに向かっているのかわかっていない。しかし、コンピューターやソフトウェアとどのようにやり取りしていくのかが本質的な部分で変わろうとしている、テクノロジー分野における大きな転換期の真っただ中にいるようで、それは無視できないことだ。ともかく、AIはその変化の大きな一翼を担うことになるだろう。
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元記事:Generative AI could transform the way we interact with enterprise software
By:Ron Miller
翻訳:Nariko
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