2022年8月18日
執筆者
EContent Magazineのコントリビューティング・エディターを経て、2014年よりTechCrunchで企業に関する記事を執筆。過去には、CITEworld、DaniWeb、TechTarget、Internet Evolution、FierceContentManagementなどのメディアでレギュラーコラムを執筆。
クラウドベンダーのビッグスリーであるアマゾン、マイクロソフト、グーグルが発表した決算では、クラウドが全体売上を押し上げていることは明らかである。しかし、おそらく最も予想外だったのは、Synergy Researchの調査結果によると、何年も33%にとどまっていたAWSのマーケットシェアが、2022年の第2四半期で34%に上昇したことだ。
さらに驚くべきは、何年も着実にマーケットシェアを伸ばしてきたマイクロソフトが、前四半期の22%からこの四半期は21%へとシェアを落としたことだ。3位のGoogleは10%前後で安定している。
SynergyのチーフアナリストであるJohn Dinsdale(ジョン・ディンズデール)氏は、マイクロソフトのマーケットシェアがわずかに低下したのは、おそらく大数の法則によるもので、同社はこのところの成長を維持できなかったのだろうと指摘する。
「Azureが毎年50〜80%成長する時代は終わった。ある程度の規模になると、そのような高い成長率でオーガニック成長することは事実上不可能だ。そのため、Azureの成長率は必然的に低下する傾向にあった。AWSは、Azureがそこに到達するずっと前に同じ現象を経験している。当社の記事で指摘したように、第2四半期のマーケットシェアは変化したものの、Azureの年率換算成長率はAWSよりかなり高いままだ」とディンズデール氏はTechCrunchに語った。
しかし、AWSがこれほどの成長を続けていることは驚くべきことだという。
「その巨大な規模を考えると、毎年30〜40%成長し続けるAWSの能力はむしろすごいものだと言うべきであろう。過去13四半期、前年同期比の成長率はこの範囲にある。第1四半期から第2四半期にかけて、クラウド市場全体で19億ドル(約2535億円)成長したが、AWSはそのうちの60%以上を占めている。これは、いかなる基準からしても素晴らしい四半期だ」とディンズデール氏は述べた。
ynergyによると、市場全体はこの四半期にほぼ550億ドル(約7兆3390億円)に達し、前年から29%拡大した。しかし、ディンズデール氏は、この間の為替レートの変化を割り引くと、実際の成長率はさらに6%ポイント高くなったはずだという。
経済の停滞にもかかわらずクラウド市場は堅調な成長を続けていると同氏はみている。
「世界的な経済・政治問題が企業の業績に与える影響について一部では懸念する声が上がっているが、クラウド市場は全く健全な状態を保っているというのが実情だ」とディンズデール氏は報告書の中で述べている。
クラウド市場の内訳をみると、アマゾンが約180億ドル(約2兆4020億円)、マイクロソフトが約115億ドル(約1兆5345億円)、グーグルが約55億ドル(約7340億円)だ。これらの数字が公表されているものと一致しない場合は、Synergyがパブリックプラットフォーム、インフラ、ホステッドプライベートクラウドサービスのみを数字にカウントしていることを考慮するといい。各社が公表している数字には他のカテゴリーの収益が含まれている可能性がある。
以前から指摘しているように、アマゾンは先発優位性から大きな恩恵を受け続けている。マーケットシェアはほとんど変動しないが、マーケット自体が安定的に成長し続けているため、売上高は毎年増えている。
さらに、クラウドインフラの利用状況を見るとさらに成長する余地が十分にあることがわかる。多くのアナリストは現時点でワークロードの20〜25%がクラウドに移行していると考えており、ワークロード自体も固定された数字ではない。これらのことは、今後まだ大きく成長する余地があることを示唆している。
景気後退局面に入った今、クラウド市場はこれらの企業を支えているように見える。7月末に発表されたGDP(国内総生産)統計によると、米国の経済は2022年の第2四半期に0.9%縮小し、2四半期連続のマイナス成長となった。
オンプレミスからクラウドへの移行は、パブリッククラウド市場そのものを前進させている。そして多くのコンピューティングワークロードがまだクラウドに移行していないため、今後数年間、クラウドが力強い成長を続ける可能性は十分にある。
アマゾン、マイクロソフト、アルファベットにとって、クラウド事業は成長と利益の重要な原動力であるため、これは歓迎すべきニュースだ。
アマゾンの場合この傾向はおそらく最も顕著だ。eコマースの巨人である同社は今年第2四半期の海外売上高が前年同期比で減少した。また、北米での売上は10%増の744億ドル(約9兆9280億円)となったものの、直近の四半期では営業利益がマイナスに転じ、売上部門は低迷しています。
そんな中、AWSはアマゾンの紛れもない収益成長および利益の要となっており、同社の業績に大きく貢献している。AWSの売上成長率は33%強と、会社全体の成長率に大きく貢献している。今年第2四半期の営業利益は57億ドル(約7605億円)で、アマゾンのパブリッククラウド部門は同期の営業利益の172%となっている。
グーグルとマイクロソフトの場合、話は少し異なる。両社ともクラウド部門に頼って成長していることは推察できるが、利益面では不透明だ。
アルファベットの第2四半期の売上高は前年同期比で16%増の中、Google Cloudの成長率は、36%近くにも達しているという。検索大手グーグルにとって悲しいことに、同社のパブリッククラウドグループの営業利益は昨年第2四半期の5億9100万ドル(約790億円)の赤字から直近の四半期では8億5800万ドル(約1140億円)の赤字へと悪化している。
マイクロソフトも同様で、Azureの40%増に支えられて第2四半期(2022年会計年度第4四半期)に売上高12%増を記録した。残念ながら、マイクロソフトが公表している数字からはAzure部門の実際の営業利益がわからないため、これ以上深く掘り下げることはできない。
ビッグスリーのクラウドベンダーのシェア争いは、各社がビジネス競争を繰り広げる中で細かな変動を見せている。しかし、大局的にはパブリッククラウドの移行が続いているため、少なくとも主要プレイヤー3社が存在する余地はありそうだ。これはマクロ経済の影響を他の事業で受けているアマゾン、アルファベット、マイクロソフトの各社にとっては朗報と言える。パブリッククラウドはメガテックにとって成長ドライバーとなりうるか。ただ、パブリッククラウドが収益性の低い事業を支えている、それが現実だ。
四半期末までにはまだ時間があるが、不況であろうとなかろうと、クラウド業界の活況は続くだろう。
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元記事はこちら:The biggest story from Big Tech earnings is the sheer growth power of public cloud
By Ron Miller, Alex Wilhelm
翻訳:Nariko
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