【スタディプラス✕Globee】エンジニアリング責任者が語る、エドテック業界がプロダクトづくりにこだわるエンジニアの成長に最適な理由

2022年11月21日

株式会社Globee 取締役CTO

上赤 一馬

東京大学大学院卒。新卒でソフトバンク株式会社へ入社。同期入社で後にGlobee創業者の幾嶋研三郎氏に出会う。その後、幾嶋氏からの誘いを受け、2017年8月、株式会社Globee取締役CTOに就任。現在はモバイル・フロントエンド・バックエンド・データ分析・インフラを横断して開発を行う。プライベートでは1歳児のパパ。

スタディプラス株式会社 ソフトウェア事業本部 開発部部長/VPoE

大石 弘一郎

SIerで15年ほどtoB向けのシステム開発を行いながら、個人でiOSアプリ開発も行う。その後、教育系スタートアップにiOSエンジニアとして転職し、2019年にスタディプラスへ参画。モバイルクライアントグループのリーダーを経て、現在はソフトウェア事業本部 開発部 部長/VPoEおよびエンジニア採用責任者も兼務。

テクノロジーで教育業界にイノベーションを起こすことで大きく期待され、最近テレビドラマでも取り上げられたEdTech(エドテック)業界。

そんなエドテック業界で存在感を示し続けているのが、270万人が利用するAI英語教材「abceed(エービーシード)」を開発・運営する株式会社Globeeと、大学受験生の2人に1人が利用するという学習管理アプリ「Studyplus(スタディプラス)」を開発・運営するスタディプラス株式会社です。

飛ぶ鳥を落とす勢いの両社のエンジニア責任者にお話を伺ったところ、お2人は口を揃えて、始めからエドテック業界に関心があったわけではないと話す。

お2人はなぜ、エドテック業界に飛び込んだのでしょうか? 自信を持って「エドテック業界は面白い」と言い切るお2人に、エンジニアとして教育事業と向き合う苦楽を語っていただきました。

効率化と習慣化。違うアプローチで学習サポート

──「abceed」と「Studyplus」はそれぞれどんなプロダクトか、簡単に教えていただけますか?

上赤:英語学習者向けのサービス「AI英語教材 abceed」は「AI英語教材」と題している通り、600以上の市販の英語教材と書籍を電子教材に起こしアプリ/Web上で学習できるサービスになっています。教材の音声コンテンツを取り入れたり、独自開発した採点機能を組み合わせたりすることで、一般の電子書籍と比べて、より効率的に学習に取り組んでいただけるのが特徴です。

また、企業や語学スクール、学校現場などの法人向けには、生徒や受講生の学習状況や予測スコアがリアルタイムに確認可能なプラットフォーム「abceed for school」も提供しています。

大石:「Studyplus」は学習者の勉強記録の管理から進捗の可視化、受験勉強に役立つ情報の発信まで、学習の習慣化を総合的にサポートするプラットフォームです。大学受験を控える高校生から資格取得を目指す社会人まで、幅広く利用していただいております。

さらに学校や塾など教育機関向けには、生徒情報のデジタル化やリアルタイムのオンラインコミュニケーションを可能にする学習管理プラットフォーム「Studyplus for School」を提供し、教育現場のDXに注力しています。

──効率化と習慣化。一言学習サポートといっても、ぜんぜん違うアプローチですね。

大石:そうですね。学習の習慣化って、なかなか難しいんですよね。とくに学校を離れてから、仕事や育児、介護などでまとまった学習時間が取れない人がほとんどですから。

そんな方たちにも学びの喜びを感じていただけるように、学習進捗の可視化や目標までのカウントダウン機能の実装を通して、日々の小さな成果をモチベーションに勉強を続けてもらえたらと考えております。「学ぶ喜びをすべての人へ」はスタディプラスのミッションでもあり、実際、今の利用者のうち2割ほどは社会人の方で、英会話の勉強や仕事に必要な資格取得やプログラミング学習の習慣化に利用していただいております。

上赤:対してGlobeeは、「個人の可能性を最大化する」ことをミッションとしていて、勉強意欲の高い方に、最高の学習ツールを提供することに注力しています。英語学習アプリというとオリジナルコンテンツを提供しているところが多いなかで、あえて既存書籍の電子化にこだわったのも、そこに理由があります。

というのも、学習者に選ばれ続けてきた教材や書籍には、著者の何十年にわたって培ってきたノウハウが詰まっているからです。その書籍の内容をどういうふうにアプリ化すれば読者にもっとも効率良く勉強していただけるのか。高品質なコンテンツに敬意を払いつつ、アプリならではの良さやAIならではの強みを掛け合わせることで、学習者に役立つ最高の「学習ツール」にできると考えています。

「良いプロダクトをつくりたい!」をモチベーションに

──そんなお二方がエドテック業界にジョインした理由は何でしょうか?

上赤:いつかは自分の代表作と呼べるようなプロダクトをつくりたいとずっと思っていて、それがここでなら叶えられると思ったからです。正直、「教育じゃなければいけない」というこだわりはなかったんです。たまたま出会った代表の幾嶋が教育に強い情熱を持っていて、彼が世に出したいエドテックのサービスに、私も大きな社会的価値を感じました。これは自分の代表作になれるものに巡り合えたかも、と。

大石:教育業界に強いこだわりがなかったのは僕も同じです。僕はSIerからキャリアをスタートさせ、13年くらいSEとして勤めました。その傍ら、iOSアプリの個人開発も行っていたんです。それがだんだんと楽しくなって、「自社開発に携われる会社に行きたい」と思い、転職した先が教育系のベンチャーでした。その後、再び転職してスタディプラスにやってきました。

上赤:転職の時にまた教育系の企業に行こうと考えたのは、1社目で教育系のプロダクト開発に関わってみたら割と楽しかったから、とかですか?

大石:というより、同じ業界で異なるプロダクト開発に携わるのは、エンジニアのキャリア的に面白かったからです。あとは、1社目で培ったドメイン知識やプロダクト開発の経験をそのまま活かせるのも大きかったですね。

これは教育業界ならではのことかもしれませんが、「エドテックでなければならない」というエンジニアは少ないように思います。採用で来ていただく方に応募理由を聞いても、どちらかというと、自社サービスに携わりたい、多くのユーザーに届けられるサービスをつくりたい、といった思考の方が多いですね。上赤さんのところはいかがですか?

上赤:うちも同じですね。会社もプロダクトもこれからどんどんグロースしていくフェーズなので、新しい機能を開発できるところに魅力を感じて来てくださる方が多いですね。

とはいえ、「教育に全く興味がありません」という方もむしろ珍しいのかなと思います。皆さん人生のどこかでは教育を受けてきたし、「子どもを授かったのを機に教育について考え始めた」といって、エドテック業界に関心を持ち入社してくれたエンジニアもいます。

大石:「我が子の将来に関わるような事業に携わりたい」とかですね。わかります。あと、シンプルに教育分野のお仕事は社会に貢献していることを実感できる、という方も多いと思います。

──そこがジョインのモチベーションになっていると。ただ、業界に関心がないとドメイン知識の部分はどうしても手薄になってしまうと思われますが、そのあたりはどのように考えていますか?

上赤:Globeeに関して言えば、求められる開発スキルをお持ちなら、業界知識や市場理解は入社のタイミングでは、さほど求めていません。私も「abceed」の開発に携わって8年になりますが、業界への興味・関心や知識は開発に携わっているうちに身についてきていることを実感しています。

その一方で強く求めるのが、ピュアに「良いものをつくりたい!」という熱量ですね。業界知識はあとからキャッチアップできるけど、良いプロダクトを生み出す熱意は後から持っていただくことがなかなか難しいですから。

大石:上赤さんもおっしゃったように、特段教育業界に興味がなくても、我々は常に教育に触れてきました。その経験から、「自分が大学受験を目指していたときに、こんなサービスがあったら助かったのに」「自分だったらもっと使いやすいように改善できたのに」といった気持ちを持っているかを大事にしていますね。かつての自分が使いたいと思えるサービスをつくっていく。そこが大きなモチベーションになりますから。

──率直にお聞きしますが、エドテック業界は金銭的理由で敬遠されることはありますか?

上赤:メインユーザーが学生や教育機関なので、多くのtoCプロダクトと比較して収益化が難しいですし、「エドテック業界は儲かりづらい」というイメージはある程度事実でしょう。

ただ、近年はコロナの影響もあってか、ICT教育サービスにお金を払うという習慣が世間に徐々に根付いているように思います。以前よりは事業として上手くいきやすい環境になったのかなと。

大石:そうですね。待遇に関しては、「業界トップクラスの給与が出せるかと言われれば難しいけれど、皆さんがイメージしているよりは多めに提示できますよ」という感じですかね。

上赤:「給与はモチベーションになることもなければ障害になることもない」くらいのイメージでしょうか。大石さんがおっしゃるとおり、「イメージよりは多めですよ」とは伝えたいです(笑)。

toBとtoCのバランスは常に模索中

──教育業界というと、「体制が古そう」や「顧客のITリテラシーが低く、コミュニケーションに苦労しそう」といったイメージから参入を躊躇するエンジニアも多いようですが、実際はいかがでしょうか?

上赤:GlobeeはこれまでtoCサービスを中心につくってきましたので、その辺りの課題感はまだ強くありませんが、toBサービスも積極的に展開しているスタディプラスさんのほうはいかがですか?

大石:たしかに、工夫が必要な場合はあります。例えば、大手クラスの学習塾や公的な教育機関ですと、それぞれの現場にすでにワークフローが確立していることも珍しくありません。そのような現場にプロダクトを導入していただくためには、業務上の課題を解消できるように、機能をカスタマイズすることが求められます。先方は開発用語に慣れていないことが多いので、いつも丁寧に対話を重ねながら開発を進めています。

ただ、こうしたコミュニケーションをわずらわしく思うエンジニアもいるのでしょうが、僕はわりと好きですよ。やりとりを重ねることで業界全体の構造や課題を垣間見ることができて、業界の解像度が上がる面白みもありますね。

──ほかには、現在プロダクト開発で困っていることはありますか?

上赤:プロダクトにtoC、toB両方の機能を備えている場合、toB用にカスタマイズしていくと、toCのUXを損ねてしまう懸念もありますね。

大石:そこはバランスが本当に難しい…。加えて、限られた開発リソースをtoB、toCでどう配分するかも常に悩ましい問題ですね。

上赤:まさにそうなんです。弊社の開発メンバーは現在10名弱ですが、今後toBサービスの本格展開を見据えて、規模的にも事業フェーズ的にもチームを分割しなければならない段階です。複数チームがきちんとワークし、なおかつ個々人のパフォーマンスを上げられる体制をどうつくればよいのか…。スタディプラスさんではどのようにチームを分割していますか?

大石:現在はシンプルにtoB/toCで2分割している体制です。ただ、シンプルだからといって上手くいくわけではなくて。

例えば、toBプロダクトの「Studyplus for School」で新機能を開発する際にも、「Studyplus」と連携しなければならない場面が出てくるのですが、チームが別れてしまっているために、コミュニケーションコストが上がりやすくて。場合によってはハレーションを起こすこともあるので、体制の見直しも含めて対策を検討しているところです。

上赤:ハレーションが起きると、エンジニアの離職にもつながりますからね。

大石:エンジニアは個人のモチベーションがパフォーマンス、ひいては会社全体の生産性に大きく関わるところがあるので、「会社としてやってほしいこと」を共有するのはもちろんですが、「エンジニア本人がやりたいこと、もしくはやりたくないこと」を共有してもらうのも大切だなと感じています。

「自分、良いものつくってる!」とストレートに感じられるうれしさ

──お二方から見て、ほかの業界にはないエドテック業界ならではの面白さ、魅力は何ですか?

上赤:ユーザーの成長を支えるプロダクトをつくっているので、ポジティブフィードバックをもらいやすいことが魅力だと思います。「『abceed』のおかげでTOEIC®︎の点数が上がった!」など、ユーザーの方から嬉しいニュースを共有いただくたびに、やりがいを実感していますね。

大石:たしかにそうですね。スタディプラスはサービスの性質上、毎日継続して使うユーザーが多く、新しい機能がリリースされるたびに、すぐにフィードバックいただけることが多いです。「前より使いやすくなった」などのコメントがあると、シンプルに嬉しいですよね。

上赤:社会への貢献をダイレクトに体感できるのも、エドテック業界の面白さの一つですね。良いサービスをつくれば、社会が良くなっていく。そこに一切のノイズがないので、迷いなく突き進んでいける良さがあります。

大石:SNSなどで、スタティプラスを使って日々の学習進捗を記録しているユーザーを見ると、おこがましいながらも、その方の成長を支えているような気持ちになれますね。

上赤:「自分、良いものつくっているな」と、ストレートに実感できます(笑)。

大石:あとは逆に、エドテックだから、教育業界だからというハードルが一切ないのも、この分野の魅力ではないでしょうか。「良いものをつくりたい」という気持ちをお持ちの方なら、きっと活躍できると思います。

上赤:「別に教育分野に興味ないから」と敬遠するのではなく、「このプロダクトが面白い」とか、「このエンジニアの話面白そう」だけでも、一度入ってみていただきたいですね。きっと自分なりの面白さを見出せると思いますよ。

取材・執筆:夏野かおる
撮影:赤松洋太

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