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2026年2月10日
![コマンド暗記で太刀打ちできない問題に。Kubernetesを「現場で使いこなす」ための厳選4冊[レバテックLAB]](https://levtech.jp/media/wp-content/uploads/2026/02/260209lab386high.jpg)

株式会社Preferred Networksのソフトウェアエンジニア。Kubernetesを基盤とした深層学習・AIワークロード向けクラウドサービス「PFCP」の開発・運用に従事。Kubernetes Meetup Tokyoの主催や書籍の執筆・監訳など、コミュニティ活動や情報発信にも精力的に取り組んでいる。
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はじめまして、須田一輝(@superbrothers)です。
私は「Kubernetes Meetup Tokyo」の主催者の1人として活動しており、Kubernetes が v1.0 としてリリースされる以前から、10年以上にわたり利用してきました。これまでの経験から、Kubernetes をより深く理解し、現場で活躍するための「おすすめの書籍」を今回から2回にわたり紹介します。
Kubernetes のアーキテクチャを学び、kubectl コマンドで Pod を作成できるようになった。CKA や CKAD といった資格も取得し、コンテナオーケストレーションの基礎は身についた――。
学習フェーズから実践フェーズへと移行する中で、多くの人が次に直面するのは「教科書と実運用のギャップ」という高い壁です。いざ本番環境へのデプロイや運用を目の前にすると、次々と「現場ならではの課題」が浮かび上がってきます。
これらの問いに対する答えは、単なるコマンド操作の暗記や表面上の仕組みの理解だけでは導き出せません。システム全体を俯瞰し、自動化や計測、そして信頼性を維持するための「設計・運用の勘所」を身につける必要があります。
本記事では、Kubernetes の基礎を卒業し、現場で使いこなす「一歩先の運用」を実践しようとしているエンジニアに向けて、4冊を紹介します。

▲『Kubernetes完全ガイド 第2版』⻘⼭真也 著、インプレス
現場でトラブルシューティングをしているとき、あるいはマニフェストを書いているとき、「あれ、このパラメータの挙動はどうだったっけ?」と手が止まる瞬間は、ベテランであっても頻繁に訪れます。そんな時に頼りになるのが本書です。
すでに CKA などの資格を取得し、基礎を把握している方であっても、実運用ではパラメータの設定ひとつで挙動が大きく変わり、それが問題の改善につながることもあります。本書は Kubernetes の機能が網羅的に解説されており、必要な情報をピンポイントで引ける「辞書」としても役立つ一冊です。
インターネット上の情報は古くなっていたり、断片的だったりすることがありますが、体系的に整理された本書を参照することで、基礎の再確認とともに、自信を持って設定を行うための「安心感」を得ることができます。
本書の第2版は2020年出版ですが、この頃には Kubernetes は安定期に入りつつあり、API や機能に大きな変更は少なくなっていたため、今でも十分に活躍します。最新の機能についてはWeb上の情報を補足する必要がありますが、体系的な知識の土台として本書には大きな価値があります。

▲『Kubernetesパターン 第2版―クラウドネイティブアプリケーションのための再利用可能パターン』Bilgin Ibryam、Roland Huß 著、松浦隼人 訳、オライリー・ジャパン
個々のリソース(Pod, Deployment, Serviceなど)のつくり方はわかっても、それらを組み合わせて「具体的にどうシステムを構成するか」というフェーズになると、悩み込んでしまう人は多いはずです。
本書は、Kubernetesにおける「デザインパターン」を解説した書籍です。例えば、サイドカーパターンやアダプターパターンといったコンテナ特有の構成から、デプロイ戦略に至るまで、現場でうまくいっている「型」を学ぶことができます。
辞書的に機能を確認する「完全ガイド」とは異なり、本書は「現実世界のシステム要件を、Kubernetesのプリミティブな機能でどう実現するか」という切り口で書かれています。各パターンの背景にある考え方を理解することで、単にマニフェストが書ける段階から、要件に応じたアーキテクチャを設計できる段階へとステップアップできるでしょう。

▲『Kubernetesの知識地図——現場での基礎から本番運用まで』青山真也、小竹智士、長谷川誠、川部勝也、岩井佑樹、杉浦智基 著、技術評論社
Kubernetesを現場で使いこなすには、Kubernetes 本体だけでなく、CNCF(Cloud Native Computing Foundation)の巨大なエコシステムに存在する膨大なアドオンから自分たちに適したものを取捨選択して使いこなす必要があります。しかし、継続的デプロイ、Ingress/Gateway API コントローラ、クレデンシャル管理、セキュリティのためのポリシーエンジンなど、選択肢が多すぎて「どれを選べばいいかがわからない」というのが実情ではないでしょうか。
本書は株式会社サイバーエージェントの現場で実践されてきたノウハウを、具体的なツールの紹介とともに学ぶことができます。たとえ紹介されているツールが自分たちの環境にマッチしなくても、その領域の他のツールを検討することが可能です。一つ一つ選択するだけでも大変な作業となるアドオンの選定において、本書は一つの指針として大いに役立ちます。

▲『入門 Prometheus―インフラとアプリケーションのパフォーマンスモニタリング』Brian Brazil 著、須田一輝 監訳、長尾高弘 訳、オライリー・ジャパン
Kubernetes 上でアプリケーションを動かすなら、避けて通れないのが「監視(モニタリング)」です。Datadog などのマネージドサービスを使用していない限り、Kubernetes における監視のデファクトスタンダードは Prometheus です。
本書は、Prometheus のアーキテクチャから、メトリクスの種類、集計(PromQL)、アラート発報まで、モニタリングの基礎を体系的に学ぶことができます。
一点留意していただきたいのは、日本語版は第1版であり情報が古い点です。英語の原著では第2版が出ているため、可能であればそちらを参照することをおすすめします。また、本書では Kubernetes 上で Prometheus Operator を使用したより発展的かつ実践的な運用については深く触れられていないため、公式ドキュメントを併せて参照する必要があります。
昨今ではオブザーバビリティの標準として「OpenTelemetry」が注目されていますが、こちらはメトリクス・ログ・トレーシングを包括的に扱うため、概念も実装も複雑になりがちです。まずは本書で「メトリクス監視」の基礎を固めることが、結果としてオブザーバビリティへの確実な第一歩となります。
1回目の今回は「学習フェーズから実践フェーズへと移行する」中級者に向けて、おすすめの4冊を紹介しました。
Kubernetes はそれ自体の複雑さに加え、CNCF が抱えるエコシステムの選択肢も膨大なため、当初はその全体像に圧倒されてしまうかもしれません。しかし、実践を通じて Operator をはじめとする強力な仕組みを使いこなせるようになれば、Kubernetes はあなたのシステムを支える上で、決して欠かせない頼もしい存在となるでしょう。
次回は、Kubernetes クラスタを自前で運用するなど、もう一歩深い知識が求められる領域に向けた書籍を紹介します。マネージドサービスを利用している方であっても、ブラックボックスの中身を知ることで、Kubernetes をより自在に活用できるようになるはずです。
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