2025年1月21日
PIVOT株式会社 プロダクトマネージャー
蜂須賀 大貴
エンジニア、プロジェクトマネジメント、新規事業開発などを経て、メディア業界一筋のプロダクトマネージャーとして従事。株式会社IMAGICA(現・株式会社IMAGICA Lab.)、フリーランス(複業)、株式会社サイカを経て現職。メディア企業のプロジェクトを担当する。主にアジャイル開発やプロダクトマネジメントの領域で講演、ワークショップ開催、書籍や記事への寄稿を行う。
X:@PassionateHachi
株式会社マネーフォワード DPM(※)
イシジマミキ
DTPデザイン、Webデザインを経てソフトウェア開発領域にてプロダクトデザインを行う。フリーランスから法人化したデザインコンサルティング会社を経営するが、より組織的なデザインやソフトウェア開発へのチャレンジを求めて株式会社マネーフォワードに入社。アジャイル開発のノウハウをデザインプロセスにも活用するため、デザイン開発生産性の可視化・向上やリサーチプロセスの標準化などを行う。(※所属・肩書などは取材時点のもの。)
X: @mikiishijima
株式会社マネーフォワード デザインマネージャー
古長 克彦(ファシリテーター)
金融SIerに新卒入社し、11年間にわたりシステムエンジニア/UXデザイナーを経験。その後、ウェブ制作会社で業務システムUI/UXデザイン事業の責任者および執行役員を経て、2022年、マネーフォワード入社。現在はバックオフィスSaaSのビジネス戦略、横断デザイン、デザイナーのピープルマネジメント、採用推進など幅広く担当。
X:@kocho_katsuhiko
テック業界におけるベテラン・シニア層のキャリアパスは多様化しています。
プレイヤーを極める、マネジメントに転身する、起業する__。それぞれのキャリアについて意見を交わしあうイベント「R35. Meetup」が2024年10月15日に開催されました。
主催したのは、テック業界の多様な才能を集め、ナレッジや人材同士が「交差」できる場作りを目指すコミュニティ「CrossRel」。
本レポートでは、ソフトウェア開発、プロダクトデザイン、プロダクトマネジメントの分野で道を切り拓いてきた3人が、キャリアにまつわる意思決定の軸やキャリア選択がもたらしてくれたものをテーマに語り合った、パネルディスカッションの内容をご紹介します。
※所属・肩書などは取材時点のものです。
栗林健太郎(GMOペパボ株式会社、以下・栗林):この業界でのキャリアの始まりは、はてなに入った32歳の年。その後、35歳で今勤めているGMOペパボに入りました。
転職当時はコードをバリバリ書くエンジニアでしたが、最終的にはCTOとしてマネジメントの道に進みました。2020年からは仕事を続けながら、大学院に通って5年目です。今は毎晩泣きながら博士論文を書いています(笑)。
古長克彦(株式会社マネーフォワード、以下、古長):これまでの意思決定はどのようにしてきたのですか?
栗林:ペパボに入った2012年頃は、自分としてはコードを書くのがめちゃくちゃ楽しくて、まだまだエンジニアとして現場で開発していたかったです。ちょうどGMOペパボが当時では珍しかった「専門職のキャリアラダーをつくります」宣言を発信したこともあり、僕がやりたいと思っていたことが言語化されたような気持ちになりました。「これじゃん!」と思って移ったんです。CTOは、前任の人が辞めて、その後任をお願いされたという事情もあり、頑張ることにしました。
古長: ありがとうございます。 続いて蜂(蜂須賀)さんお願いいたします。
蜂須賀大貴(株式会社PIVOT、以下・蜂須賀):僕は今、35歳真っ只中なんですよ。メディア業界にこのまま骨をうずめたいと思っています。
あんちぽさんがペパボに入られた2012年は僕の就活の年でした。「一番最初に内定が決まった会社に行く」と決めて、テレビや映画の映像編集を手がける会社にエンジニアとして入りました。
僕は「これからエンジニアとしてバリバリやっていくぞ」という気持ちだったのですが、 2年目の時、院卒で年上のエンジニアが後輩として入ってきました。その人は中学生時代にマイクロソフトに表彰されたことのあるスーパーエンジニアで、彼の働きぶりを見て僕はエンジニアとしてのキャリアを諦めて、チームを束ねる側に回りました。色々やっていったら、それが今で言うプロジェクトマネージャー、プロダクトマネージャーの道に繋がりました。
その後一度フリーランスを経て、正社員に戻り、今はPIVOTという会社で PMをやりながら開発組織の立ち上げをやっています。
古長:フリーランスになったきっかけは何だったのですか?
蜂須賀:新卒入社したIMAGICAに在籍中、1社に限らず複数の会社さんとお仕事する方法はないかなと思いました。そこで、1つの球団で何年か経験した後、自分で手を上げてメジャーや国内の球団と移籍の交渉をするプロ野球の「FA宣言」にならい、自分のYouTubeチャンネルを通してFA宣言しました。
FA宣言の前に色々なコミュニティや勉強会に顔を出すようになったおかげで、ありがたいことに多くの方から仕事のオファーをいただきました。最終的に50社くらいから5社に決めさせていただきました。
古長: フリーランスから正社員に変わったのは、どんなきっかけがあったのですか?
蜂須賀:シンプルで、自分のやりたいことができなくなったからです。
フリーランスのプロダクトマネージャーとして、3年計画とかを5社に対して書いていても、経営者からは「3ヶ月後いないじゃん」と思われるのか、だんだん任せられる仕事がプロダクトマネージャーの育成になってきたんです。すると、いつの間にか プロダクトを見ている時間よりも プロダクトマネージャーの教育に割いている時間が多くなり、やりたいことはこれではないと思いました。
3年のロードマップを書いたら少なくとも3年間はコミットできる会社に転職しないといけないと思って 正社員に戻りました。
古長: ありがとうございます。ミキさんも会社員を経てフリーランスとなり、そこから再び会社所属というキャリアを歩んでいるようですね。
イシジマミキ(株式会社マネーフォワード、以下・イシジマ):ええ。
ファーストキャリアの話をすると、高校の卒業式の次の日にハローワークに行って「WEB 制作」という仕事を見つけ、観光協会のホームページをつくったのが最初ですね。 そこから仕事で東京に行き、Twitterで出会ったデザイナーたちに「うちどう?」って言われて転職したのがライブドアという会社です。
でも、働いているうちにもっと裁量を持って働きたくなって、一度フリーランスになりました。
その後、「コワーキングスペースをやりたい」とブログで書いたら、「僕もやりたい」という人が出てきて、その流れで集まった何人かと会社を設立しました。子育て期間はフリーランスの仕事がメインでしたが、2019年に新たにデザイン会社を立ち上げました。プロダクトデザイン自体は自分の会社でできましたが、クライアントと協力しながら良いチームを作るのが難しかったです。同じ会社で一つのチームで課題に挑むことができれば、辛いことも他のメンバーと乗り越えながら成果を出せると思って、マネーフォワードに転職しました。
古長: 改めて皆さんのキャリアの話を聞くと、キャリアの切り開き方は三人三様ですね。
栗林: 月並みな感じになってしまいますけど、やっぱり「他の人がいてこその自分」だと思います。逆に言うと僕自身はそんなにやりたいことがないので、人にきっかけを与えてもらって、 「何か面白そうだからやるか」みたいな感じでやったら、今の感じになったのもあります。
蜂須賀:自分の想像しうるキャリアより、さらなる可能性をその都度求めていきたいと思っています。簡単に言うと、「ネットの海に自分を放り投げてみて、誰かに見つけてもらう」みたいなことをやってきました。自分の才能を自力で見つけられない可能性もあるから、誰かに「あなたのこういうところ、実はいいですよ」と言ってもらうために、意図的に自分を出してきました。 そうすると、想像以上の選択肢が何パターンか生まれるので、自分がときめく方、好きな方を選んできました。
イシジマ: 私も、仕事をきっかけとした人とのつながりの中でキャリアが広がっていくイメージですね。
余談ですが、私、おとぎ話の「ブレーメンの音楽隊」が好きなんです。 あのお話で音楽隊はブレーメンに行かないんですよね。 ブレーメンに行こうとした途中で泥棒から家を奪い取って住み始めるんです。仕事を通して大切な仲間を増やして、行き当たりばったりのところで釣りをしたり、家具をつくったりして過ごす暮らしもいいなと思って。
古長: 最後に、キャリアにお悩みの方々に 応援の言葉を頂いてよろしいでしょうか。
栗林:なかなか悩んでこなかったので難しいですね。
僕は前からずっと日記を書いていて、紙のノートに日記を書くのが面倒くさくなったからホームページをつくろうと思ってプログラミングを始めました。日記を書きながら、もやもやと思っていた色々なものを言語化していたら、「うちに来なよ」と誘われました。一つ一つ、小さな発信を積み重ねることがチャンスにつながることもあると思います。
蜂須賀: あえて言わせていただくとすると、自分の可能性は自分ではなかなかわからないので、一旦インターネットにいろいろ放ってみるのがいいんじゃないかと思っています。
イシジマ: 「あなたが今の立場にあるのは、スキルによってではなく、ネットワークによるものだ」という考え方を大切にしています。転職する時、新しいスキルを身に付けて新しいところに行こうとしがちですが、 順番が違うなと。 まず、「スキルの前に、人と会っていっぱい話しましょう」という言葉を皆さんに送りたいです。
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