2024年5月23日
Ubie株式会社 デザインエンジニア
WebフロントエンドエンジニアとしてWebアプリケーション開発に従事した後、UIデザイナーを経てデザインエンジニアとなる。デザインとエンジニアリングが交わるところが最近の主戦場で、プロダクト開発の他にデザインシステムの開発・運用にも取り組んでいる。また個人的な活動としてデザインシステムやUIデザインの同人誌を書いたり勉強会を主催したりしている。
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こんにちは。Ubie株式会社でデザインエンジニアをしている大木尊紀です。今回はエンジニアのキャリアの選択肢として、デザインエンジニアについて紹介します。
UbieにはWebフロントエンドエンジニアが少なく、バックエンドエンジニアがUIの開発もしていたり、コードが書けるデザイナーも少なかったりしていました。そのため、実際にリリースされるプロダクトのUIをより品質高いものにしたいと思ってもうまく仕組みがつくれずにいました。
そこで、デザインとエンジニアリングの両方のスキルがある人に入ってもらい、リリースされるUIの実装品質を高める仕組みをつくってもらおうと考えた、というのがUbieでデザインエンジニアが誕生した背景になります。
ちなみに私は当初プロダクト開発エンジニアというポジションで選考を受けていましたが、途中からデザインエンジニアとしての選考に切り替わり採用されました。
Ubieではデザインエンジニアを「デザインから実装まで一貫して取り組める人材」と定義しています。
参考:デザインエンジニア募集要項
そのため、私もデザインからエンジニアリングまで、実際のプロダクトの状況によってさまざまな業務に取り組んでいます。
具体的には、デザイントークンやコンポーネントのデザインからドキュメントの作成、運用体制の構築(チームビルディングなど)、各種CI/CDの整備などを行っています。
デザインシステムを浸透させるために実際の開発チームに入ってデザインや実装を手伝ったり、ハンズオンを実施したりすることもあります。
デザインシステムには常に開発メンバーの要望を取り入れていく必要があり、デザイナーやエンジニアと積極的にコミュニケーションを行い意思決定をすることが求められます。そこで両方のスキルを持ち合わせているデザインエンジニアがリードすることで円滑に運用ができるというメリットがあると考えています。
デザインエンジニアはデザイナーでもあり、エンジニアでもあります。そのため、状況に応じてはデザインも実装もやっています。
デザインだけ、Webフロントエンドの開発だけ、という場合もあるし、デザインからバックエンドの実装まで一気通貫で担当することもある。チームの状況が変われば、担当領域も変わります。
最近は特に社内管理画面や医療情報データ閲覧画面など、「複雑なデータをどうやってわかりやすいインターフェースに落とし込むか」という仕事が多いです。
そういう画面をつくるにはシステムの理解と情報設計が重要になってくるので、デザインエンジニアが設計から入るとスムーズに開発が進むなと感じています。
2024年4月に障害者差別解消法が改正された影響もあり、アクセシビリティの重要性は年々高まっています。Ubieでも、継続的なアクセシビリティ改善に取り組んでおり、デザイナーや社外メンバーと一緒にプロジェクトを推進しています。
アクセシビリティの改善を進めるためには、デザインの美しさ・便利さと技術的な制約の両方を考える必要があるので、デザインエンジニアが価値を発揮しやすい仕事だと思います。
アクセシビリティ改善というと、個々の実装を改善していくイメージが強いですが、アクセシブルなプロダクトを開発する仕組みを整えることも重要で、私は主にその仕組みづくりや社内コミュニケーションの設計に取り組んでいます。
具体的には、アクセシビリティチェックツールの導入や、エンジニアやデザイナーを巻き込んでアクセシビリティ改善を組織に根付かせる活動などです。
2024年4月に発表された『情報アクセシビリティ好事例2023』でUbieのプロダクトを採択いただきましたが、これへの応募などもその一環でした。
デザインエンジニアが任される仕事として、プロトタイピングが挙げられることが多いと思いますが、私はあまりプロトタイピングをしていません。
Ubieでは、プロトタイピングで精度を上げるよりも、実際にリリースしてユーザーの反応を見ながら改善を回していくスタイルが主流なため、プロトタイピングをする機会は多くありません。
まず何と言っても、「デザインとエンジニアリングの両面からプロダクト開発に関われる」ことが最大の楽しさだと思います。
私はデザインも好きですし、実装も好きで、UIをつくることが好きです。
デザインエンジニアは一般的なWebエンジニアと違い、デザインに責任を持てるので、職能の垣根を越えてプロダクト開発で躍動できると思います。私はこれがとても気に入っています。
仕組みをつくることもデザインエンジニアの楽しさのひとつです。
デザインエンジニアは、デザインシステムやデザインとエンジニアリングの接続プロセスを改善するためのさまざまな仕組みをつくります。
仕組みを作るのは難しいですが、うまく設計できればチームやプロダクト全体に大きな影響を与えることができ、やりがいのある仕事ができるはずです。
デザインエンジニアはUI開発に携わることが多いため、UIデザインのスキルも重要です。
Ubieではデザインの実務経験があることも募集要項の必須スキルとして定義しています。
組織によってはUIデザインのスキルを求めない場合もあるようですが、経験を伴わない知識は使い方のわからない道具と同じであり実際にUIデザインができることが重要だと考えています。
私はプロトタイピングをやっていませんが、プロトタイピングはデザインエンジニアに求められる大きな役割のひとつであり価値を発揮しやすい場面でもあります。
最近はプロトタイピングツールが高機能になってきているので、実装可能性を考慮しながらプロトタイピングができることもデザインエンジニアの重要なスキルだと思います。
デザインエンジニアはデザインシステムの開発や運用を任せられることが多いので、デザインシステムとは何か、構成要素やそれを実現するための手段など、通常のアプリ開発とはまた違った知識が必要になります。
ひとつの立場に固執せず、状況に応じて役割を切り替えることが求められます。柔軟に自分の動き方や考え方を切り替えて仕事をするスキルがあると仕事がしやすくなるはずです。
デザインエンジニアになるために重要なことは、デザイナーとしてもエンジニアとしても実務経験をきちんと積んでいることだと私は考えています。
デザインエンジニアはデザインとエンジニアリング両方の専門性を求められる場面が多く、デザインとエンジニアリングを行ったり来たりしながら仕事をします。そのため、どちらかの実務経験がないと適切な判断ができずスムーズに業務をこなせない可能性があります。
デザインエンジニアになりたいからといって、いきなりデザインエンジニアになるのはあまりおすすめできません。まずはエンジニア、もしくはデザイナーとして一人前になってからスキルを拡げていって、その結果としてデザインエンジニアになっている、というのが理想的なのではと考えています。
またデザインエンジニアとして働いていく上で重要なのが「軸足(専門性)」です。
デザインエンジニアは広く浅く、いろいろなことを任されがちなポジションなので、気を抜くと器用貧乏になるリスクもある職種です。
広く浅くなんでもできることも専門性のひとつと言えなくもないですが、組織で活躍するためには継続的に自分の専門性を高めることが重要です。
私の場合は、情報設計や、デザインとWebフロントエンドを接続する仕組みの設計の2つを軸足にして活動しており、その専門性がデザインシステム構築や管理画面構築などの業務に活かせていると感じています。
デザインエンジニアというポジションはまだまだ発展途上で会社ごとに異なる定義を持っています。しかし、それだけ可能性があるポジションでもあると思っているので、このポジションに興味をもってくれる人が増えてくれたら嬉しいなと思っています。
本記事をきっかけにデザインエンジニアに興味を持ち、一緒にコミュニティを盛り上げていけたら嬉しいです。
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