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老舗機械メーカーはなぜ、副業フリーランスを新規事業開発の推進役に選んだのか

JUKI株式会社

JUKI株式会社

事業内容 : 工業用ミシン、産業装置、家庭用ミシンなどの製造・販売
業種:メーカー
設立 : 1938年12月15日
従業員数 : 5,255名(連結) / 830名(単体)
URL:https://www.juki.co.jp/

課 題

  • DXを念頭に新規事業開発を検討するも社内にWebやサーバ分野などのIT人材が不在
  • 開発ノウハウそのものの構築が必要となるなかで、組織づくりから関われるエンジニアの獲得に苦戦
  • SIerへの外注や技術者派遣、SESの活用を検討したが解決には至らなかった

効 果

  • コロナ禍による多様な働き方への認知が高まっている状況を好機と捉え、副業エンジニアに着目
  • レバテックフリーランスに協力を依頼したところ、プロジェクトマネージャーやテックリードの起用に成功
  • 開発組織の立ち上げやプロパー社員への教育に協力的なフリーランスの助力によって、開発進捗に弾みが出た
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お話を伺った方

JUKI株式会社
縫製機器開発部
第9設計グループ主任技師
粟野元一郎氏

プロジェクトマネージャー
岡村正美氏

メンバー
阿部優太氏

※写真はオンライン取材でのキャプチャによるものです

日本のモノづくり産業を支えてきたメーカーに、いま100年に一度と言われる大きな変革期が訪れています。デジタルトランスフォーメーションという名の「大波」です。

モノづくりの現場や社内業務のデジタルシフトに加え、「モノづくり」から「コトづくり」へと事業を転換するにあたって、メーカーがもっとも苦戦するのはデジタル人材の獲得でしょう。

世界No.1シェアの工業用ミシンを筆頭に、家庭用ミシン、電子・産業装置など幅広い事業を展開する1938年設立の老舗機械メーカー、JUKI株式会社も例外ではありませんでした。

しかしJUKIは、文化や開発に対するアプローチが異なるデジタル人材を事業成長の力に加えるため、フリーランスエンジニアの活用で事態の打開を図ったと言います。

はたして、それはどのような活用法なのでしょうか。JUKIでIT技術を活用した新しい発想の製品開発に挑むお三方に、フリーランスエンジニアとの上手な付き合い方についてお話を伺いました。

デジタル人材の不在から始まった新規事業開発プロジェクト

——皆さんが所属されている第9設計グループについて教えてください。

粟野氏:第9設計グループは工業用、家庭用を含めたミシン本体のソフトウェアを扱う部署です。しかし、近年のDXの進展に伴い、IT分野の技術を活用した開発にも取り組むようになりました。まだ具体的な製品について公にできる段階ではないので詳細は差し控えますが、製品化を目指した初めての本格的なプロジェクトを立ち上げ、開発を進めているところです。

——現在の開発体制は?

粟野氏:私が全体の責任者として、プロジェクトの契約や採用まわりを担当し、岡村は現場を取り仕切るプロジェクトマネージャー、阿部にはコーディングなどの開発実務を担ってもらっています。社員以外では、副業で関わってくださっているフリーランスエンジニアが5人おり、現在は8名体制で開発に取り組んでいます。

——岡村さんはプロジェクトマネージャーだそうですが、今のお立場に就く前はどのような仕事を?

岡村氏:設計者として制御ソフトウェアの実装に携わっていました。現在は12月の展示会に向け、フィージビリティ調査やPoCに取り組む傍ら、開発の進捗管理や予算管理に携わっています。実はこのプロジェクトに参加するまで新規事業やプロジェクトマネジメントとも無縁でした。

——阿部さんはいかがですか?

阿部氏:私も制御ソフトウェアの設計者だったので、IT寄りの開発は今回のプロジェクトが初めてです。今は開発のイロハを学びながら、主にコーディングを担当しています。

エンジニアの獲得に苦戦。コロナ禍を機に副業フリーランスの可能性に着目

——ITに関する知見が乏しい状況から現在の体制をつくり上げるまでに、さまざまなご苦労があったと思います。最初に直面された課題について教えてください。

粟野氏:まずはプロジェクトに必要なリソースを見極め、外部から人材を集めるのが一番大変でした。ご存じのとおり当社は機械メーカーです。社内にはモーターや電源など、ハードウェアの制御技術に長けたソフトウェアエンジニアは大勢いますが、ITの分野に携わったことがあるソフトウェアエンジニアはおりません。プロジェクトの準備期間中から、すでにお付き合いのある複数の人材派遣会社や開発会社にお声がけし、協力を仰いだのですが、同様にIT系に長けた会社との付き合いがなく、苦戦を強いられました。

——どうやってその課題を乗り越えられたのですか?

粟野氏:まず、当社の開発スタンスからご説明します。当社はコア技術である機械制御技術を自社内で進化させつつ、その他の分野は積極的に外部の協力会社にアウトソーシングし効率的な開発を行うことを基本方針としており、今回の開発についてもそれは変わりません。

社内に大規模なIT分野のソフトウェア開発部隊を築きたいわけではないので、当初はSIerへの外注や技術者派遣、SESの活用を検討したのですが、おそらく開発組織づくりから関与することに対するハードルの高さ、複雑な技術を要する縫製機器の特殊性などが懸念材料として受け止められたのでしょう。なかなか思うような人材を紹介していただけませんでした。そこで着目したのが、フリーランスエンジニアの活用だったのです。

——なぜ、フリーランスエンジニアに着目されたのですか?

粟野氏:コロナ禍で場所を問わない自由な働き方が注目されるようになりました。当社もリモートワークが当たり前になり、働き方に対する柔軟性が一気に高まったので発想を変えることにしたというのが大きな理由です。

また、仮にフルタイムで参画してもらうのが難しくても、副業ならOKという方も多いのではないか。そう考えると、会社に属さなくても収入を得られるほどの技量を持ったフリーランスエンジニアは、非常に魅力的に思えます。コロナ禍をきっかけに新しい仕事のスタイルにチャレンジしてみようと考え、フリーランス活用に踏み切りました。

▲コロナをきっかけに、フリーランス活用を検討したと話す粟野氏

——どのような経緯で、レバテックフリーランスにお声がけいただいたのでしょうか?

粟野氏:フリーランスエンジニアに魅力を感じたものの、要件定義も含めたゼロからの新規開発という難易度の高いプロジェクトに携わってもらう人材をマッチングプラットフォームで探すのは容易ではありません。また、ミスマッチのリスクを考えると仲介者を挟んだほうがいいと考え、一番信頼を置けそうな大手にウェブサイト経由でメールを送りました。それがレバテックフリーランスとの出会いです。お声がけしたのは2021年3月頃ですね。

レバテックの支援でプロマネ、テックリードの参画を実現

組織の立ち上げ、プロパー社員の教育にも熱心な希少人材との出会い

——初めてのお取引から1年が経過しました。フリーランスエンジニアをどのように活用されてきたのか、その変遷を教えてください。

粟野氏:まずは、デザイナー兼フロントエンドエンジニアとサーバーサイドエンジニアの2人からスタートしました。ただ、開発をマネジメントできる人材が社内にいなかったため、プロジェクトマネジメント経験者をさらに1名、テックリードクラスのフロントエンド、サーバーサイドエンジニアがそれぞれ1名ずつ加え、3カ月ほどかけて体制を整えました。プロジェクトマネージャーは最初の3カ月間のみで、現在は岡村に任せているので、それ以降は、フロントエンド3名、サーバーサイド2名、デザイナー1名に参画してもらっています。テックリードは皆さん副業で、コーダーは専業の方もいらっしゃいます。

——当初いらしたプロジェクトマネージャーとして参画されたフリーランスは、岡村さんの指南役として契約されたのですか?

岡村:そのとおりです。大手メーカーご出身で、案件を同時並行で掛け持ちされている敏腕プロジェクトマネージャーでした。3カ月間という短い期間でしたが、予算管理やスケジュール管理、品質管理のポイントに加え、仕様をまとめるための現場ヒアリングのコツや各種デジタルツールの使い方など、かなり踏み込んだノウハウを共有いただきました。

——阿部さんは、フリーランスエンジニアとどのような関わり方をされていますか?

阿部:私はフロントエンド側のテックリードを担っていただいている方から、コードレビューやペアプログラミングなどを通じて、開発の基本的な知識やコードの書き方まで、一つひとつ丁寧に教えてもらっています。一人前のソフトウエアエンジニアリングになることはもちろんですが、社内に内製チームをつくるわけではないので、今後、外部の開発パートナーに的確なディレクションができるようになるという観点で、知識やノウハウを共有していただいています。

フリーランスエンジニアは技術力に加え、社内に新風を吹き込んでくれる存在

——腕利きのフリーランスエンジニアを、開発の担い手としてだけでなく、社内のプロパー社員の育成のために招聘するという活用方法があることをご存じない方が多そうです。

粟野氏:確かにそうかもしれません。私も最初からこうした需要を満たしてくれるフリーランスは本当にいるのか確信がありませんでした。でも、レバテックフリーランスに依頼する際、開発に加え育成や教育にも関与してくれる方を、と要望したところ、ピッタリな方をアサインしていただきました。

——やはり、教育まで携わってもいいというフリーランスは少数派ですか?

粟野氏:そうですね。ただ、少ないながらもまったくのゼロではないことが、今回の取り組みでわかりました。今お願いしているテックリードには教育に限らず、新規のフリーランスの人材選定にも入り込んでもらっています。

開発業務以外の関わりを持ちたくないと考える方が多いのは確かですが、エージェントが仲介することによって、開発以外の業務にも興味を示してくれる方と出会える確率は高まると思います。

——改めて、フリーランスエンジニアがもたらす価値について、どのようにお考えですか?

粟野氏:開発力の提供のみならず、外の空気を社内に吹き込んでくれる貴重な存在という認識です。モノづくりからコトづくりへの転換を進めようとしている当社に、新たなフェーズに踏み出すためのノウハウや技術、より良いプロダクトをつくるために率直にものを言い合う自由闊達な開発カルチャーの素晴らしさを伝えてくれています。とても大事なパートナーです。

——副業のフリーランスに活躍してもらうために工夫していることはありますか?

粟野氏:皆さんリモートでお仕事をされているので、朝会など定期的な情報共有の時間をとても大切にしています。お付き合い頂いている皆さんはプロフェッショナルなので、基本的なコミュニケーションさえ怠らなければ、社員と変わらず質の高い成果を残してくれます。副業だから、フリーランスだからといって、特別扱いする必要はあまり感じません。

諦めずに取り組めば、ゼロからでもフリーランスの活用は可能

——これからフリーランスエンジニアをどのように活用していくおつもりでしょうか?

粟野氏:近い将来、本プロジェクトはプロトタイプ開発のフェーズを追え、製品開発フェーズに入りますが、その時には開発は外部に委託する見込みです。フリーランスエンジニアとの契約を大幅に増やすイメージは今のところありません。ただ、外注する前の仕様策定や開発ディレクションに関するアドバイザー的な立ち位置で関わってもらう機会は残ると思っています。

——レバテックフリーランスに対してご要望があれば聞かせてください。

粟野氏:当社の事情をよく理解したうえで、実力のある方を紹介してくれますし、解決すべき課題が生じたとしても、フリーランスエンジニアへのサポートも含めて、親身になって対処してくれるので、今後もお付き合いできればと思っています。

強いて言うなら、優秀なエンジニアは競争率が高いため、商談から契約に至らずに終わるケースが少なくありません。こちらもフリーランスの関心を惹くような仕事をつくる努力をするので、ぜひ、今後も良い方を紹介していただければと思います。

——岡村さんと阿部さんは、フリーランスエンジニアにどのような期待を寄せていますか?

岡村氏:今もテックリードの皆さんは、気さくに意見を出してくださいますしフォローしてくださっています。これまでどおり技術的な支援だけでなく、チーム内のコミュニケーションを活発にしてくれるような、前向きな方と一緒に仕事ができればと思っています。

阿部氏:私はまだまだ知らないことが多いので、技術的な知見やノウハウの共有に積極的な方だとうれしいですね。スペシャリストから積極的に学び、新しいことへのチャレンジと成長に貢献できたらと思っています。

——最後に、フリーランスエンジニアの活用に不安を感じているメーカーの方々に、メッセージをお願いします。

粟野氏:前例のない取り組みを実現させるわけですから、依頼内容の選定や契約書の内容を精査し、マネジメント体制をどうするか決めるなど、それなりの準備が必要です。経営陣や現場の理解を得るのに時間がかかるかもしれませんし、関係部署との調整に悩まされるかもしれません。ただ、諦めず地道に取り組めば必ず道は開きます。

コロナ禍を経て、エンジニアの働き方もよりいっそう自由になりました。フリーランスエンジニアの中にもさまざまな志向を持つ方がいらっしゃいます。われわれもそうでしたが、フリーランスエンジニアのエージェントに相談してみることで状況を変えられるかもしれません。1人で悩むよりも早く最適解にたどり着けるはずです。

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