
『猫と開発の日々』は、エンジニアの皆さんのすぐそばで、独自の時間を生きている愛猫さんとの日々や軌跡をつづっていただくエッセイ連載です。
前回に引き続き、Ubie株式会社でプロダクト開発をしている鹿野壮さんと愛猫のうにさんにご登場いただきます!
スタッフプロダクトエンジニア
鹿野 壮
九州大学芸術工学部音響設計学科卒業。現在はUbie株式会社に勤務している。とくにTypeScript・CSSが好きで、暇があればコードを書いている。勉強会・技術SNS・Twitterなどで積極的に技術情報を発信中。CSS Nite 2017〜2019ベストセッション受賞。
うに
2016年生まれの茶白の元野良猫。ガリガリだったのにいつの間にか7kgの筋肉質ボディに成長。飼い主のことが大好きで、隣に座っただけで「ゴロゴロ」と喉を鳴らす。チャーム・ポイントは、太くて短い鍵しっぽ。
冷蔵庫の上から「どすん!」と飛び降りる愛猫
「どすん!」 。我が家では時々、すごい音がしていました。音の主は愛猫のうにで、筋肉質の7kgの巨体が、高い冷蔵庫の上から床に飛び降りたときの音です。
うには元野良猫。高いところが大好きで、気付くと高い棚の上や冷蔵庫の上に登っています。野良時代に身に付けた習性なのか、部屋を見下ろせる場所にいると安心するようです。問題は降りるときで、普通の猫なら音もなく着地するところを、うにが降りると「どすん」と大きな音がします。しかもお尻が大きく、どんくさく、基本的に運動が苦手。本人は多分、自覚していないけど。

最初は笑って見ていました。でも、着地の度に床が鳴るのを聞いているうちに、段々と不安になってきました。いつか着地に失敗して、怪我をしてしまうのではないか。もう1つ気がかりだったのが、ご近所への迷惑です。当時は真下が駐車場の2階だったのでよかったのですが、階下に人が住む家に引っ越したら、あの音は確実に響きます。
うにと私は相思相愛です。いつも側に来ては、ゴロゴロと喉を鳴らして甘えてくる可愛いやつ。第1回で書いた通り、人生のどん底のときからずっと一緒にいてくれた相棒です。だからこそ、出来るだけ自由に、幸せに、長生きしてほしい。大好きな高いところを我慢させるのではなく、安全に楽しめるようにしてあげたい。
そう考えて思い付いたのが、キャットタワーのプレゼントでした。
市販のキャットタワーは最適じゃなかった
最初は市販のキャットタワーを使っていました。しかし、市販のタワーは、7kgの巨体がのびのびと走り回るには小さ過ぎました。また、ポール式のキャットタワーだったのですが、その巨体とどんくさい動きゆえに、何度も倒れていました。

せっかくなら、部屋の壁一面を使いたい。登って、渡って、走り回れるようにしてあげたい。それともう1つ。私には「透明ボウルで、うにを下から覗きたい」という欲望がありました。透明なボウル型のステップにうにが乗ったら、あのお腹と肉球を真下から眺められるはず。この条件を満たす市販品は見つかりませんでした。
ならば、自作しようと決めました。
キャットタワーの自作はひたすら肉体労働
キャットタワーの材料は、柱になる木材(2×4サイズ)とディアウォール、踏み板とはしご。そして透明ボウルです。ホームセンターに買いに行きました。

ディアウォールというのは、木材の上下にはめて天井と床の間に突っ張ることで、壁や天井に穴を開けずに部屋の中に柱を立てられるパーツ。これのおかげで、賃貸でも壁に穴を開けることなく木材の柱を設置できます。設計する上で一番考えたのは、うにのジャンプ力です。踏み板の間隔が広過ぎると、どんくさいうにはジャンプに失敗するかもしれない。かといって狭過ぎると、登る楽しさが無い。うにが無理なく飛び移れて、かつ“ 登ってる感”を感じてもらえる間隔を探して、板の高さを決めていきました。
設計図を描いてくれたのは妻でした。デザイン・ツールのAdobe XDで、柱の位置と踏み板の高さを図面に起こしてもらいました。Webデザインに使うツールでキャットタワーの設計図を引く日が来るとは思いませんでしたが、寸法が目に見えるようになったおかげで、迷わず組み立てを進められました。

木材の柱は、天井の高さに合わせて、慣れないノコギリで長さを調整しました。一番辛かったのは、踏み板をネジで止める作業です。板が水平になっていることを何度もチェックし、何十個とあるネジをひたすら止めていきました。本当に大変で、腕がぷるぷるしました。
ただただ大変でしたが、それを支えたのは「うににのびのびと過ごしてもらいたい」という愛情と、「透明ボウルで下から覗きたい」という欲望でした。
自作の巨大キャットタワーの完成

そうして完成したのが、5本の柱と7枚の踏み板、はしご、透明ボウルからなる巨大キャットタワーです。設置したのは、私が仕事をする部屋。床から天井まで、壁一面がうにの遊び場になりました。市販のキャットタワーでは、絶対に手に入らないものです。
本人も気に入ってくれたようで、ドタドタとはしごを登り、最上段で人間を見下ろしていました。

キャットタワーは私のデスクの後ろに配置したので、ミーティング中には椅子の後ろのキャットタワーで寝そべっていることも多いです。

唯一の誤算は、踏み板のサイズ。うにの巨体を測り間違えてしまい、板と壁の隙間からお肉がはみ出ていました。はみ出たお肉がぷにぷにしていてとても気持ちいいのですが、ツンツンとしていると怒られました。ごめんね。

2年間、全く乗ってくれなかった透明ボウル
うにを下から覗きたくて取り付けた透明ボウルは、2年もの間全く使われませんでした。ボウルの横にある踏み板までは来るのに、ボウルには決して乗らない。透明の床が信用できないのかもしれません。まあ、うにが我々の思い通りに動いたことなど一度もないので、半分諦めていました。
ところがある日、うにが透明ボウルの中に何故か入ってくれました。急いでボウルの下から覗くと、透明なボウル越しに、ピンクの肉球が張り付き、大きなお尻が収まっている。2年間夢に見ていた光景が、そこにありました。下から眺める肉球が最高でした。

自由と安全のための自作キャットタワーと生きるうに
自作キャットタワーのおかげで、お気に入りの高い板の上でくつろいでくれるようになりました。何より、冷蔵庫などの高いところから「どすん!」と降りることはほぼなくなりました。うには9歳、人間で言えば52歳なので、怪我の心配が減ったのが嬉しい限りです。
うにを喜ばせたい一心でつくったキャットタワーでしたが、一番喜んでいたのは、ボウルの下でスマホを構えている私だったかもしれません。これからも大好きな高いところで、自由に、安全に、のびのびと過ごしてほしい。そしてたまにはボウルに乗って、あの肉球を見せてほしいと思っています。



