
山下(Seamless)
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ドイツのハインリヒ・ハイネ大学などに所属する研究者らがScience Advancesで発表した論文「Intermediate stages in the origin of metabolism at a phosphorylating hydrothermal vent」は、自立した細胞としての生命が、細菌と古細菌で別々に、いわば2度誕生した可能性を示した研究報告だ。
初期の生命は熱水噴出孔に依存?
研究チームは、初期の生命がどのようにして生きるための化学反応(代謝)を獲得したのかを解析し、生命の起源に対する新たな見解を提示した。
地球で誕生したすべての生物の共通祖先「LUCA」は、海底の熱水噴出孔の特殊な環境に生息していたと一部で考えられている。研究チームは今回、初期の細胞が水素ガスやアンモニア、二酸化炭素などから生体物質をつくり出すために用いた424の化学反応ネットワークを再構築し、数学的手法を用いて解析を行った。
その結果、現代の細胞は自らの体内で酵素を使って生命維持に必要な化学反応を行っているが、当時のLUCAは代謝に必要な酵素を約半分しか持っていなかったことが分かった。
残りの半分をどうしていたかというと、熱水噴出孔の環境に存在する天然の金属を酵素の代わりに利用していたという。つまり、ごく初期の生命は熱水噴出孔という環境に依存しており、そこから離れて生きることはできなかったことが示唆された。
細菌と古細菌は別々に熱水噴出孔から旅立った?
LUCAから「細菌」(バクテリア)と「古細菌」(アーキア)という2つのグループが枝分かれした後に次のような進化が起こる。
それぞれのグループが、環境中の金属に頼っていた反応を自前で行うために、独自に異なる酵素をつくり出すようになった。
自力で化学反応を起こす仕組みを別々のやり方で獲得した結果、細菌と古細菌は別々に熱水噴出孔から旅立ち、独立した細胞となった可能性がある。だとすれば、自立した細胞としての生命は2回誕生したともいえる。
また、初期の生命がどのように活動エネルギーを得ていたのかという長年の謎にも答えが出つつある。
現代の生命は「ATP」という複雑な物質をエネルギー源としているが、初期の熱水噴出孔に、そのような物質が自由に使える形で存在していたとは考えにくい。
しかし今回の実験で、熱水噴出孔に天然に存在するパラジウムを触媒として、同じく天然に存在する亜リン酸が有機化合物をリン酸化(リン酸基がつくと分子は反応しやすくなり、次の反応へ進める)できることが分かった。亜リン酸とパラジウムが、ATPと酵素の役割を肩代わりしていたことになり、初期の生命は、環境そのものに備わっていた化学とエネルギーに支えられて存在していたと考えられる。
今回の結果から、すべての生物は1つの共通した遺伝暗号を持つ一方で、熱水噴出孔を離れて自力で生きる細胞への移行は、細菌と古細菌で別々に2回起きたという。
Source and Image Credits: Natalia Mrnjavac et al. “Intermediate stages in the origin of metabolism at a phosphorylating hydrothermal vent,” Science Advances 12, eaef3128 (2026). DOI: 10.1126/sciadv.aef3128 冒頭の画像は論文内図1を加工
