山下(Seamless)

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国際的な研究チームであるSTAR Collaborationに所属する研究者らがNature誌で発表した論文「Measuring spin correlation between quarks during QCD confinement」は、クォークがハドロンへと変化する過程において、スピンの相関が保存されている証拠を世界で初めて示した研究報告である。

真空に隠された「クォークと反クォークのペア」

宇宙の物質を構成する基本的な粒子であるクォークは、決して単独では存在(観測)できず、常に陽子などの「ハドロン」と呼ばれる粒子の中に閉じ込められている。この「クォークの閉じ込め」という現象は、量子色力学(QCD)において、いまだ解明されていない謎のひとつである。

クォークがどのようにしてハドロンに変化し、そこに質量やスピンといった特徴がどう受け継がれるのかを知ることは、物理学における重要な課題となっている。

今回、ブルックヘブン国立研究所の巨大加速器を用いたSTAR実験のチームは、このクォークがハドロンに変わる瞬間に起きている現象を、粒子のスピンのつながりを利用して初めて実験的に捉えることに成功した。

現代物理学において、真空は単なる何もない空間ではなく、クォークと反クォークのペアが隠されている複雑な状態だと考えられている。このペアは通常は直接観測できない。

実験では、陽子同士を光速に近いスピード(光速の99.996%まで加速)で衝突させ、この真空状態を激しく揺さぶることで、隠れていたストレンジクォークと反ストレンジクォークのペアが現実世界に叩き出された。このとき、真空が持つ固有の性質により、飛び出したクォークのペアは最初から互いのスピンの向きが揃った相関状態になっている。

▲陽子同士を光速で衝突させることで真空が揺さぶられ、隠れていたクォークのペアがスピンを揃えた状態で飛び出す様子を描いたイメージ図

飛び出したクォークペアは単独では存在できないため、周囲の環境と相互作用しながら直ちに「ラムダ(Λ)ハイペロン」と呼ばれるハドロンペアへと姿を変える。研究チームは、このラムダハイペロンが崩壊して別の粒子になる際のデータから元のスピンの向きを割り出し、クォークだった頃のスピンの揃い具合が、ハドロンに変化したあとも残っているかどうかを検証した。

▲飛び出したクォークのペアが周囲と相互作用しながら閉じ込められ、それぞれがラムダ(Λ)ハイペロンというハドロンに姿を変える過程を表した図

約6億回の衝突データを解析した結果、誕生した2つのラムダハイペロンの角度や速度が近く、近距離にあるペアの場合には、明確なスピンの相関(揃い具合)が観測された。これは、クォークからハドロンへという変化の過程を経ても、もともとのスピン相関の大部分、あるいはすべてが保存されていることを示す証拠である。

一方で、2つのラムダハイペロンが大きく離れた方向に飛んでいった場合には、このスピンのつながりは消失してしまうことも判明した。これは、粒子が移動する間に周囲と複雑に影響し合うことで、もともと持っていた量子的つながりが壊れてしまう量子デコヒーレンスという過程を捉えたものと考えられる。

Source and Image Credits: STAR Collaboration. Measuring spin correlation between quarks during QCD confinement. Nature 650, 65–71 (2026). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09920-0